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JAXA「H3ロケット」2024年2月15日に打ち上げへ!!

H3ロケット©JAXA

宇宙をもっと身近に、スペースチャンネルです。

今回は、皆さんも首を長くして待っているH3ロケット2号機の打ち上げ情報について解説していきます。

■H3ロケット概要

H3は、JAXAと三菱重工業が開発している新型国産ロケットです。一回の打ち上げ費用を、H2Aロケットの半分となる約50億円とすることを目標としています。

2023年3月7日、初号機となるH3の打ち上げが行われましたが、ロケット第2段エンジンの燃焼が開始されないというトラブルに見舞われます。徐々にロケットの高度は低下していき、打ち上げから約14分後、所定の軌道に投入できる見込みがないことから、空中にて指令破壊を行うこととなりました。これにより、ペイロードであった地球観測衛星「だいち3号」が失われることとなりました。

第2段の燃焼が開始されなかった原因は一つに特定することはできませんでしたが、JAXAより電子機器の故障であることが発表されました。エンジン点火装置を動作させるためのエキサイター呼ばれる部品や配線などで、ショートが発生した可能性があるとのことです。

このことから、2号機では確認不足であった全ての電子機器を点検し、ショートの発生を未然に防ぐ対策を施すとの事です。

■2号機が2024年2月15日に打ち上げ!

日本の主力大型ロケット「H-IIA」©JAXA
日本の主力大型ロケット「H-IIA」©JAXA

そして先日、JAXAによりH3ロケットの2号機が2024年2月15日に打ち上げられることが発表されました。

JAXAとしては、できるだけ早くH3の打ち上げを成功させる必要があります。その理由は、現在主力であるH2Aロケットは、2024年の残り3基の打ち上げで退役することが決定しているためです。本来であればH3ロケットは2020年より運用が開始されるはずであり、H2AとH3の二基体制で徐々に世代交代を行っていくはずでした。しかし、H2Aが退役してしまうと現状で日本の主力大型ロケットがなくなってしまうため、早期に打ち上げ体制を構築する必要があるのです。

更に、既にH3ロケットでの打ち上げを待っている衛星や探査機がごった返している状況となっています。JAXAの発表によると、H3ロケットの運用開始の遅れから、様々なプロジェクトの打ち上げ時期が後ろ倒しとなっています。例えば、新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」や月極域探査計画「LUPEX」が2025年度に変更されました。ちなみに、決してH3ロケットの影響のみではなく、宇宙機側の開発状況の遅れなども原因の一つである可能性には注意が必要です。

■火星衛星探査計画「MMX」の打ち上げ延期

火星衛星探査計画「MMX」©JAXA
火星衛星探査計画「MMX」©JAXA

そして特に深刻なのは、火星衛星探査計画「MMX」です。MMXは、はやぶさ、はやぶさ2に続くサンプルリターンミッションであり、火星の衛星フォボスからサンプルを採取し地球に帰還することで、世界で初めて火星圏のサンプルを入手することを目的としたプロジェクトです。

当初は2024年度に打ち上げ、2029年までに火星圏からのサンプルリターンの達成を目指していましたが、H3ロケットの開発の遅れから2024年の打ち上げが断念されました。

それならH3が完成し次第すぐ打ち上げれば良いのでは?と思う方もいると思います。実は、地球と火星は太陽の周りを回る公転スピードが異なっており、最接近するタイミングが2年2か月おきしかやってこないのです。そのためMMXは、2024年の打ち上げを断念したため、次の打ち上げは2026年に変更されることが決定しました。2020年代中に火星圏からのサンプルリターンが達成できるのか、非常に難しい状況と言えるでしょう。

なぜここまで急いでいるかというと、実はNASAとヨーロッパ宇宙機関ESAも現在、火星の砂を地球へ持ち帰る「マーズ・サンプル・リターン」計画を共同で進めているからです。

2021年にNASAは探査車「パーシビアランス」を火星に着陸させ、2023年1月には火星でのサンプル採取に世界で初めて成功しました。採取された岩石や土壌のサンプルは2本のサンプルチューブへと詰められ密閉され、一本は火星表面に設置し、一本はパーシビランスが持ち続けています。

続いて、NASAは2028年に小型ロケットを搭載した火星着陸機を打ち上げ、パーシビアランスの近くに着陸することでサンプルを受け取る計画です。そして、小型ロケットにより火星から離陸し、火星軌道上で待機しているESAの地球往還機にサンプルを受け渡し、2033年に地球へ帰還する予定となっていました。

しかし、こちらの計画はアメリカ政府より十分な予算が付かなかったとの事で、プロジェクトが縮小傾向にあるという報道も出ています。果たして、MMXとマーズ・サンプル・リターン計画、どちらが世界で最初に火星圏のサンプルを地球へ持って帰るのか、今後も目が離せませんね。

■2024年のH3ロケット打ち上げ予定

先進光学衛星「だいち3号」©JAXA
先進光学衛星「だいち3号」©JAXA

それでは、3月までに打ち上げられるH3ロケット2号機のペイロードを紹介します。

まず、当初H3ロケット2号機は地球観測衛星「だいち4号」が搭載されるはずでした。しかし、今年3月のH3ロケット1号機の打ち上げ失敗により、地球観測衛星「だいち3号」を失ってしまったことから、H3 2号機に実用衛星を搭載することに対して様々な議論が行われてきました。

特に、H3 2号機も失敗しだいち4号を失ってしまった場合、日本の観測や防災の観点で深刻な空白期間ができてしまうということが懸念されます。現在運用中の「だいち2号」が故障してしまった場合、自国の衛星による地球観測自体ができなくなってしまい、常に海外や民間企業に日本の観測を頼らざるを得なくなってしまうのです。そのため、だいち4号の搭載は見送られることとなりました。

その代わり、ロケット性能を確認するためのペイロードを搭載する方針となります。ペイロードには飛翔中の各種データを計測する機能を持っており、今後の打ち上げに向けた精度向上が期待されます。

一方で、JAXAはH3ロケットの空きスペースに搭載する相乗り小型衛星を搭載することを発表しました。もちろん、たとえ打ち上げが失敗し衛星を失ったとしても、JAXAは補償しないという約束のもとです。そのため、応募する側もリスクを承知の上で衛星を搭載する覚悟が必要です。

それでは、2機の衛星をご紹介していきます。

まず一つ目は、キャノン電子株式会社の衛星CE-SAT-1Eです。CE-SAT-1Eは質量約50kgの小型衛星で、80cmの分解能で地球を撮像することが目的です。これらの画像データをもとに、災害時の緊急観測、地理空間情報整備、3D都市データ作成研究などに貢献します。

実はキャノン電子株式会社は既にCE-SATの1から3号機を打ち上げており、数々の実証に成功しています。今回の4号機が地球の観測画像を宇宙から送ってくるのが楽しみです。

続いては二つ目の衛星は、TIRSATです。TIRSATは内閣府と経済産業省が所管する、宇宙システム開発利用推進機構という財団法人が中心となり開発しています。

TIRSATは縦横10cm、高さ30cmと非常に小さな衛星です。赤外センサーを搭載し、地球観測を実施します。

実はTIRSATは元々開発が完了していましたが、昨今のウクライナ情勢により打ち上げ機会が確保できていなかったという背景があります。今回あきらめることなく打ち上げることができて本当に良かったですね。

そして、H3ロケットの2号機の打ち上げが成功すれば、次の打ち上げも2024年内に予定されています。3号機では地球観測衛星「だいち4号」、4号機ではXバンド防衛通信衛星の打ち上げが決まっているようです。今回の打ち上げが成功し、H3ロケットの運用が軌道に乗ってほしいですね。

JAXAデジタルアーカイブス
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