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JAXA月着陸機「SLIM」が成し遂げた数々の歴史的快挙、ピンポイント着陸や月面探査ロボットを紹介!

SLIM月着陸時の撮影画像©JAXA/タカラトミー/ソニーグループ/同志社大学

本日JAXAより、小型月着陸実証機「SLIM」の月面着陸結果とその成果について記者会見が行われました。

本記事では、SLIMが成し遂げたピンポイント着陸の偉業をはじめ、SLIMが想定外の姿勢で月に着陸した原因や現在の状況など、詳しく解説していきます。

JAXAの月着陸機「SLIM」を詳しく知りたい方はこちらの記事で

■JAXA月着陸機「SLIM」月面着陸に成功!

SLIMはJAXAと三菱電機が開発した月着陸機です。

1月20日に月面の栞クレーターへの着陸に挑戦し、見事成功しました。月への着陸したのは日本として初めてであり、世界ではアメリカ、ソ連、中国、インドに続き、5か国目に月着陸を成功させた国となりました。おめでとうございます。

一方で、SLIMは月面着陸後に正常通り太陽電池による発電ができておらず、バッテリーを駆動することで地球との通信を行っていました。本来は太陽電池が太陽を向く姿勢で着陸することで、月面到達後も安定して発電をする計画でしたが、実際には想定とは異なる着陸が発生したと考えられていました。

そしてSLIMは月への降下中に、二つの小型月面ロボットを月面へ放出しています。その内の一つである「SORA-Q」は、着陸後のSLIMの撮影に成功しています。これも素晴らしい成果ですね。

SLIM月着陸時の撮影画像©JAXA/タカラトミー/ソニーグループ/同志社大学
SLIM月着陸時の撮影画像©JAXA/タカラトミー/ソニーグループ/同志社大学

その画像を見てみると、SLIMは月面でほぼ直立してしまっており、太陽電池の部分に光が当たっていない姿勢であることが判明しました。それでは、SLIMに一体何が起こったのでしょうか。

JAXAの原因究明によると、月面への降下中の高度50メートル自転にて、搭載している二つのうちのメインエンジンのうち一基に不具合が発生し、推進力が失われてしまった可能性が高いとのことです。しかし、SLIMはそのような状況下でも自動的に異常を判断し、残りの一つのエンジンをコントロールしながら着陸することに成功しました。その時の降下速度は秒速1.4メートルとゆっくりとした速度で着地しましたが、横方向にもスピードが出てしまったため、このような直立した形になったと考えられます。エンジンを一つ失っても月に着陸できるSLIM、本当にすごいですね。

一方で、SLIMは太陽電池による発電ができないことから、バッテリが全て切れてしまう前にSLIMの電源オフにしたとの事です。

今後、太陽が西から当たるようになれば発電の可能性があるとのことで、復旧に向けた準備を行っています。SLIMの機能が復帰するのを皆さんで祈りましょう。

■月面の画像データ取得にも成功!

SLIM搭載のマルチバンド分光カメラによる撮影画像©JAXA
SLIM搭載のマルチバンド分光カメラによる撮影画像©JAXA

それでは、SLIM月の探査はできたのだろうかと心配になる方はもいるかもしれません。ご安心ください。SLIMはマルチバンド分光カメラという特殊な装置を搭載しており、着陸後に月面で撮影した画像などのデータも地球へ送信することに成功しています。

この分光カメラの目的は、月の起源を解明することです。

実は、月はいまだに起源が解明されていません。過去に惑星が地球に衝突し、その破片が集まって月ができたとする「ジャイアント・インパクト説」が有力ですが、月と地球の成分がほぼ同じであるため物質科学的な矛盾を抱えているのです。

今回の探査により月の起源の解明や、人類の活動拠点としての資源利用の可能性を探ることに役立つのです。早く研究成果を聞いてみたいですね。

■世界初の超高精度ピンポイント着陸も実証成功!!

SLIMの着陸飛行シーケンスイメージ図©JAXA
SLIMの着陸飛行シーケンスイメージ図©JAXA

それでは、本日JAXAから発表のあったSLIMが成し遂げた偉業をそれぞれ見ていきましょう。

まず、SLIMの目的はただの月面着陸ではなく、降りたい場所に高精度に狙って降りる「ピンポイント着陸」を実証することでした。

例えばNASAのアポロ着陸船は、着陸精度が10km以上ですが、SLIMは100メートル以内という格段に高い精度での着陸を目指していました。そのためSLIMは、月のクレーターを撮影することで自分の位置を把握する「画像照合航法」という技術を駆使しているのです。

そして、JAXAの記者会見により、SLIMは目標地点に対して55メートルの精度で着陸ができたとの発表がありました。素晴らしい成果ですね。

これにより、例えば科学的に価値のあるクレーターや縦穴、そして月面基地へも狙った場所に着陸することができ、これからの月面開発に大きく貢献できる技術となったことは間違いないでしょう。

■二つの小型月面ロボットによる探査にも成功!

小型月面変形ロボット「SORA-Q」©JAXA
小型月面変形ロボット「SORA-Q」©JAXA

そしてSLIMは着陸の成功だけではなく、二つの小型ロボットによる探査も成功させています。

一つ目のLEV1は、月面に到着後、3メートルもの距離を跳躍移動で自由自在に移動探査を行うことに成功しました。また、月面のSLIMを撮影して、周囲のデータとともに地球に送信することもミッションの一つですが、まだ画像の取得はできていないとのことです。現在は電力を使い切っている状態とのことですが、今後に太陽電池の発電により活動を再開できるかもしれないため、今後の続報に期待しましょう。

もう一つの月面ロボットはSORA-Qです。実はこのSORA-Q、2023年4月に月面着陸に失敗した月着陸機ハクトRにも搭載されていました。しかし、残念ながらその際は月面衝突とともに通信は回復しなかったため、今回の挑戦はリベンジとなるのです。

そして、SORA-Qも月面での探査を予定通り開始し、先ほどお見せしたSLIMの着陸後の画像を撮影することに見事成功しました。更には、世界で最小、最軽量の月面探査ロボットとなったのです。これも非常に大きな快挙ですね。

二つのロボットの活躍により、日本初の月面探査ロボットであること、そして世界初の同時月面探査を達成するという大きな成果も挙げています。

二つの小型月面ロボットを詳しく知りたい方はこちらの記事で

SLIM、並びに二つの小型ロボットは、歴史に残る偉業を達成しましたね。

SLIMが着陸したSHIOLIクレーターという名前には、SLIMで実証した高精度着陸技術が、月探査の新時代を切り開くことを期待し、歴史のターニングポイントに挟まれる「栞」となるよう願いが込められているとの事です。

まさにその名前の通り、SLIMの技術がこれからの日本の月開発を加速させることを祈っています。

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