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ロシアの衛星破壊実験(2021年)、国際宇宙ステーションの宇宙飛行士に発生した緊急事態とは!?

3月12日、約6ヵ月の期間に国際宇宙ステーション(ISS)に滞在していた古川宇宙飛行士が、地球へ帰還したことで話題になりました。

宇宙に人類が滞在するのも珍しくなくなってきた昨今ですが、過去には緊急事態が発生した出来事もあります。本記事では、あわやデブリにより大事故になりかけた事件をご紹介します。

増え続ける宇宙ゴミ 中国による衛星破壊実験や、衛星同士の衝突事故を紹介

■ロシアが衛星破壊実験を強行

2021年11月15日、ロシアは「コスモス1408」と推定される衛星に、対衛星攻撃兵器ASATを発射して破壊しました。この人工衛星は1982年に打ち上げられ、数年前に稼動を止めた情報衛星で、最後の観測当時は地上から約485キロメートルの軌道を回っていととのことです。

今回の爆発で、人工衛星は1500個以上のデブリと数万個の追跡不可能な微細なデブリに分解されてしまったとのことです。ちなみに、ロシアのASAT発射試験は今回が初めてではありません。2020年には3回、2022年4月にも同様の実験を実施しており、今後も多くの破壊実験を行うものと考えられます。

■国際宇宙ステーションに迫るデブリ衝突危機

この事態を受け、高度420キロメートルの軌道を回っているISSには一時騒然となりました。ISSに滞在していた宇宙飛行士7人は就寝中に緊急で起こされ、肉眼で観測可能な水準で接近するデブリを見守っていたとのことです。宇宙飛行士は、一時ISSに係留されている宇宙船内に退避する事態にも見舞われています。

さらに、ロシア連邦宇宙公社、通称ロスコスモスは「残骸物質の軌道は国際宇宙ステーション軌道と遠く離れている。宇宙ステーションは安全地帯にいる」と主張しているとのことです。それに対しアメリカは「ロシアが自国の衛星のひとつを破壊する慎重でない試験を進め多くのスペースデブリを作り出した。これはISSの宇宙飛行士だけでなく、他の宇宙活動の危険も顕著に増加させるだろう」との声明を発表。続くイギリスも「破壊的な衛星ミサイル試験は宇宙の安保と安全を完全に無視するもの」との声明を発表しました。

■過去にはISSとデブリが衝突寸前だった出来事も?

ちなみに、過去には何度かデブリによる影響が国際宇宙ステーションISSにも波及しています。2020年、NASAはISSにおいて未確認のスペースデブリとの接近を回避するための軌道変更が実施されたことを発表しました。ロスコスモスはISSがデブリと衝突する危険性が高い「レッドゾーン」にあったとしており、緊急の回避マヌーバが必要と判断されたとしています。

ISSに滞在している第63次長期滞在クルーの宇宙飛行士3名は万が一の場合に備えて「ソユーズ」宇宙船がドッキングしているISS後方のロシア区画で待機していましたが、実際に飛行士たちが危険にさらされることはなく、デブリは同日7時21分にISSから1.39km以内を通過していったとされています。デブリが大事故にならず本当に良かったですね。

今もなお増え続けているスペースデブリ。果たして、人類が深宇宙へ進出するのが先か、それとも地球がデブリに覆われて出れなくなるのが先か、あなたはどう思われますか?

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