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【マラソンのゴールの後にしてはいけないこと】運動関連性虚脱について

たくや/ランナー医師、ランナー、ランニングコーチ

読んで頂いてありがとうございます!
たくや/ランナーです。都内で医師&ランニングコーチをしています。

今回はマラソンのゴール後におこる運動関連性虚脱ついてまとめます。

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さいしょに

マラソン大会でゴールすると、立ち止まらないよう係員の方に誘導されます。
ゴール地点は、ランナーが次々とゴールしてきます。そのため混雑緩和と思われがちです。

ですが、実は大事な理由があるんです。それは「運動誘発性虚脱」を予防するためです。

運動関連性虚脱とは

ランニング中は、心臓だけではなく第二の心臓である足も、体内の循環に関与しています。その結果、汗をかいて減少した血液・血漿でもなんとか体内で循環できているんです。

ですが急に減速・ストップすると、足~つまり第二の心臓が停止してしまいます。そして血液を循環させる力が低下して、脳への血液の供給が低下してしまいます。その結果起こる事象を運動関連性虚脱といいます。

運動関連性虚脱の頻度は?

軽いふらつき程度であればよいのですが、脳貧血で転倒したり、意識消失して救急搬送に至ったりすることもあります。

スウェーデンのイェーテボリのハーフマラソンの調べでは、約0.12-0.22%程度のランナーがこの原因で救護室を利用・救急搬送されたそうです。救護室の利用が必要ない軽い症状の虚脱はもっと多いのではないでしょうか。

特に距離が長く、ゆっくりなランナーほど発症率が高かったそうです。

運動関連性虚脱の対処法は?

対処法は国際マラソン医学協会から流布されており、ゴール後に立ち止まらないこと、ふらついた際は転倒に気を付けることが挙げられています。

また、脱水や低血糖症状と症状が類似していることもあり、飲水や糖質の摂取も推奨されています。運動誘発性虚脱にも効果があるとされています。

まとめ

ゴール後に立ち止まらないように言われるのは、ゴール地点の混雑緩和だけではありません。

ゴール後のふらつき・転倒、そして失神・意識消失の予防のためもあるのです。ゴール後はゆっくり歩きながらも、意識が朦朧としてきたら転倒に注意して横になり、周囲に知らせるようにしましょう。

以上、最後まで読んで頂いてありがとうございました。

もっと詳しく書いているので、興味があれば自分のNOTEも参照下さい:
(ビアランニングドクターのNOTE:ゴールの後の「立ち止まらないで」の本当の意味

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<参考文献>
・スウェーデンイエテボリのハーフマラソンでの運動関連性虚脱の調査
Lüning H et al. Incidence and characteristics of severe exercise-associated collapse at the world's largest half-marathon. PLoS One.7.14(6).2019(Pubmed
・運動関連性虚脱の対処法
国際マラソン医学協会救護マニュアル(リンク
・運動関連性虚脱の予防には経口補水液や糖質がよい
Asplund CA et al. Noakes TDExercise-associated collapse: an evidence-based review and primer for clinicians.BJSM.45:1157-1162.2011(BMJ

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たくや/ランナーについて
中学・高校・大学と陸上競技部で、そして卒業後もランニングを続けています。フルマラソンのベストは2時間50分。
今は都内の病院で勤務をしつつ、ランステでコーチをしています。
発信はおもにNOTEでしています(ビアランニングドクターのNOTE

医師、ランナー、ランニングコーチ

41歳まで某大学病院の消化器肝臓内科で勤務、現在は都内の一般病院で内科医をしています。また、中学でランニングを始めて走歴は約40年、その経験を活かしてランニングステーションでコーチもしています。総合内科専門医・消化器病専門医・肝臓専門医・抗加齢医学会専門医、JMJA公認ランニングドクター他、資格は多数。フルマラソンの完走は67回でベストタイムは2時間50分31秒(2019湘南)。ランナーからよく聞かれることやランナーに伝えたい事を、科学的なエビデンスと経験をもとに記事を書いています。

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