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【マラソン後の筋肉痛・疲労を残さないために】走った後活動的に観光や仕事をしたいなら、すすめたいこと。

たくや/ランナー医師、ランナー、ランニングコーチ
マラソンを走った翌日、筋肉痛や疲労で観光や生活に支障を来したことはありませんか?

昨秋には金沢、水戸、湘南マラソンが開催されました。今年もまた東京を始め、大阪、名古屋などさまざまな都市型マラソンが開催されます。大会後は観光をしたり、日常生活に戻って仕事が待っていたり様々なランナーがおられると思います。ですが、ランナーの翌日をみると、筋肉痛で観光どころではなかったり、仕事をする姿が痛々しかったりすることがあります。

しっかりと練習を積んでいるランナーであれば平気なことが多いのですが、練習不足で何とか完走できるかできないか。そんなランナーが翌日に活動的な日を送るためにはどうしたらよいのでしょうか。2018年に公開された、運動後の回復についてまとめた総括論文をもとに書いてゆきます。

1.効果的なのは、マッサージ

運動後の筋肉痛や疲労感に対して特に優秀なのは、マッサージやマッサージ+ストレッチのようです。

筋肉痛や疲労感から回復する手段の影響:Dupuy O et al.Front Physiol.2018より改
筋肉痛や疲労感から回復する手段の影響:Dupuy O et al.Front Physiol.2018より改

積極的休養や温水・冷水浴も多少効果があるのですが、影響はわずかです。そしてここでは、ストレッチ単独はあまり意味がないようです。マッサージは運動直後から2時間後に、20~30分行うことで運動後から3~4日後まで、筋肉痛が減少するようです。文献内の別の解析では、マッサージはIL-6やCPKという検査結果に良い効果をもたらす、つまりは炎症をおさえ、運動後の筋ダメージを緩和させる効果があるようです。

ランニング後、すぐにはマッサージを受けるのは難しい場合もあると思いますが、You tubeなどの動画サイトでは、自身でできるセルフマッサージも多く掲載されているので、参考にされてはいかがでしょうか。

2.温泉に入るなら、冷水浴や下肢冷却の併用をおすすめ

そしてマラソンのあとに、温泉に入るのを楽しみにしている方も多いと思います。ですが温泉であたためるだけというのは、あまりおすすめできません。

筋肉痛や疲労感から回復する手段として、温水浴・冷水浴の影響:Dupuy O et al.Front Physiol.2018より改
筋肉痛や疲労感から回復する手段として、温水浴・冷水浴の影響:Dupuy O et al.Front Physiol.2018より改

ランニングのあとの温水浴は、暑熱馴化が高まったり有酸素運動能力を向上する効果はあるのですが、リカバリーとしては不向きです。ランニングのダメージによる脚の炎症には冷却がよいとされていますので、温泉に入る方は、途中や最後に冷水シャワーで下肢を冷却することをおすすめします。

3.植物性ポリフェノール

また、運動後の筋痛に対して抗酸化食品が有効といわれており、研究では植物性ポリフェノールを中心になされています。研究で用いられているのはチェリージュースやビルベリージュースなどです。例えば2016年のイギリスからの文献では、4日間チェリージュースを飲用したのちにシャトルランテストを行ったところ、1/3から2/3まで運動後の筋痛を減らしたという報告があります。ですが逆に変わらなかったという文献もあるので、効果については運動や個人により差があるものと思います。

おそらく普段抗酸化食品を摂取しない人や、抗酸化力の低い高齢者は有効である方が多いのではと推察します。そんな方は大会前1週間、果物の摂取をしてみてはどうでしょうか。

4.鎮痛剤

もちろん鎮痛剤も有効です。ランニング中に鎮痛剤を服用するのは安全性の面からおすすめはできませんが、ランニング後でお腹の調子や尿の出に問題がなければ、服用は問題ありません。ですが予防効果はないので、痛くなってから必要最小限の回数で服用しましょう。

医師、ランナー、ランニングコーチ

41歳まで某大学病院の消化器肝臓内科で勤務、現在は都内の一般病院で内科医をしています。また、中学でランニングを始めて走歴は約40年、その経験を活かしてランニングステーションでコーチもしています。総合内科専門医・消化器病専門医・肝臓専門医・抗加齢医学会専門医、JMJA公認ランニングドクター他、資格は多数。フルマラソンの完走は67回でベストタイムは2時間50分31秒(2019湘南)。ランナーからよく聞かれることやランナーに伝えたい事を、科学的なエビデンスと経験をもとに記事を書いています。

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