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つくばから熱々の新世代ナポリタンを発信!「Banzai naporitan」店主の大いなる挑戦!

田中健介ライター

スパゲッティ・ナポリタンって、何だろう。
古き良き洋食店や喫茶店などで出される昭和感溢れる料理と連想する人々も多いかと思う。
洋食屋でハンバーグなどをメインに、贅沢にサイドディッシュとしていただく。
喫茶店では色とりどりなクリームソーダなどとともに優雅にいただく。
どちらもナポリタンの愉しみ方としては正しく、素晴らしい。
しかし近頃はナポリタンが新たな形となって後世へと受け継がれようとしている。
それはナポリタンが「古き良き時代を懐かしむ」アイテムにとどまらず、「国民食」として、ラーメンやカレーなどの専門店のように、ナポリタンを専門とした店舗が増え始めている、ということだ。
2009年に渋谷で産声をあげ、今や全国展開となった「スパゲッティーのパンチョ」がその筆頭と言えるが、そんなパンチョに続けと、ナポリタンを愛す店主が次々と現れ、ナポリタン専門店を立ち上げるようになった。
前に私がレポートした阿佐ヶ谷の「鉄板ナポリタンゴンザレス」もその一つであるが、今回は茨城県つくば市へ足を運んだ。

つくば市桜三丁目「Banzai naporitan(バンザイナポリタン)

つくばエクスプレスのつくば駅からバスで約20分、車では常磐自動車道の桜土浦ICから約25分のところにある、「Banzai naporitan(バンザイナポリタン)」が今回の目的地だ。

現代風のカフェテイストな外観は、一見してナポリタンの専門店とは思えないが、看板にはちゃんと「Naporitan」と記されている。ヘボン式ローマ字での表記に、ナポリタンは近現代における「和食」であることが伝わってくるではないか(個人の感想です)。

店内に入ると木材などナチュラルな素材を中心とした内装である。これがナポリタン専門店なのか。そうだ、カウンターにはカゴメとデルモンテのトマトケチャップの一号缶があるじゃないか。

そういえば入り口にはトマトケチャップのぬいぐるみ(?)があるし……。

カウンターには毛糸で作ったナポリタンもあるし……。

着席すればお冷のピッチャーもとケチャップ色だし、タバスコと粉チーズも設置されている。ナポリタンの専門店で間違いはない!

自分好みのナポリタンにカスタマイズできる楽しみ

メニュー表もいちいちおしゃれでセンスがいい。
麺の量からトッピングまで、バリエーション豊富なので、自分好みのナポリタンをカスタマイズできるのが楽しい。ただ、初めてだと迷う。ここはスタッフのおねーさんにおすすめを聞いてみた。

「私の好みはこがしチーズ、生スクランブルエッグ、季節のお野菜盛りです!」

じゃあそれを頼んでみよう!
せっかくだから、二品食べたいので、麺は小盛にしておく。

もう一品は壁に貼ってあったおすすめメニュー、「ミートボールナポリタンこがしチーズのせ」にしよう。こちらも小盛で。

「Banzai naporitan」のナポリタンの材料を一挙公開!

調理を担当する「Banzai naporitan」代表の大坂英之さんに厨房を見せていただいた。
基本となるナポリタンは玉ねぎ・ウインナー・ピーマンの3種類の具材から構成される。

ソースはカゴメトマトケチャップとデルモンテトマトケチャップが1:1で使われている。異なる銘柄のケチャップのブレンドは、同じケチャップなのにより複雑になるのが面白いところ。
さらに中濃ソース、チキンブイヨン、無塩バター、フルーツチャツネ、おろしにんにくなどが入った「Banzai naporitan」オリジナルソースとなっている。

特徴的なのが麺。地元の製麺所にナポリタン仕様として作ってもらっている。
ほぼデュラム・セモリナ粉・卵・水・食塩だけのシンプルな素材を練り上げている。
麺の長さは20cm(ちなみに一般的なスパゲッティの乾麺は25cm)。

大坂さん:これは『フォークが巻きやすく、ソースが跳ねにくい長さ』で設計してあります。

パスタ同様丸麺ではなく角麺なのは「その方が歩留まりが良いから(大坂さん)」だそうだが、角麺であることでソースとの絡みが丸麺より良いというメリットもあるようだ。

「Banzai naporitan」のナポリタンはこうして作られる

まずは麺を茹でる。茹で時間は3分半。

大坂さん:2分半で食べられる麺なのですが、よりソースとの絡み、味の浸透、そして『ナポリタンとしてのベストな食感』を追求して3分半が良いということがわかりました。

茹で上がった麺をフライパンへ投入。ほぼ同時に3種類の具材も入れ、炒めていく。

そしてナポリタンのソースを投入して全体的になじませる。

あらかじめ温めておいたスキレットにナポリタンを盛り付けてからは、トッピング作業。
こがしチーズはバーナーでボボボーボ・ボーボボ。

「ミートボールナポリタンこがしチーズのせ(麺小盛)」

「ミートボールナポリタンこがしチーズのせ(麺小盛)」(税込1,080円)だ。
なんとも豪華な盛り付けではないか。じっと眺めていたくなる光景だ。

スキレットというのがとてもオシャレなので、真上から撮ってみた。

トッピングで隠れがちだったナポリタンの麺を"救出"してみた。熱々の湯気とともに、麺はソースやチーズと絡まってたまらない照りを見せつけてくる。写真なんか撮ってないで、早く食べてしまいたい。世に言う「シズル感」満載のナポリタンだ。
そして、20cmの麺は、確かにフォークで巻きやすく、ソースが跳ねにくい気がする。

待ちに待った一口目を頬張る。熱い、熱すぎる。
熱々のスキレットだから熱々なのだ。
そして熱気で咽る(おじさん)。
熱い熱いと口が、頬が踊る中で、酸味と甘味、うま味が広がっていく。
「Banzai naporitan」の醍醐味を愉しんでいる。
これは新しい料理なのかも知れないが、これもまたナポリタンのひとつだ。

そしてトッピングのミートボールだ。牛肉100%とあって、つなぎ感のない、肉を嚙み締めていると実感できる、しっかりとした食感のミートボール。これが5個も搭載されているんだぜ。贅沢なメニューだ。

「こがしチーズ、生スクランブルエッグ、季節のお野菜盛りトッピング(麺小盛)」

大坂さん:『ミートボールナポリタンこがしチーズのせ』を食べ終わったタイミングでお出ししますね。

大坂さんにそう配慮いただいて出していただいた二品目の「こがしチーズ、生スクランブルエッグ、季節のお野菜盛り(麺小盛)」(税込1,410円)だ。
ここに来る道中で眺めていた筑波山を彷彿とさせる絶景だ。
山の麓には厚切りの長芋が2枚。見ただけではもはやナポリタンではない。

せっかくだから筑波山(勝手に名付けた)の逆側もご覧いただこう。
こちらにはさつま芋がいた。茨城県はさつま芋の生産量が全国二位だそうだ。
この一皿は茨城県そのものな気がした。

こちらもフォークを探ったら、やはりナポリタンであった。
「生スクランブルエッグ」と表現された卵がナポリタンに絡みつく。
卵とケチャップの相性が良いことは、好きな人にはわかっているはずだ。
野菜は長いも、さつま芋の他に、パプリカ(黄・赤)、ナス、チンゲン菜の計5種類もあった。完全栄養食じゃないかってくらいにどっさりなトッピングである。

二品とも素晴らしかった。どれを頼んでも、きっと楽しいのだろう。

なぜ、ナポリタン専門店なのか

「Banzai naporitan」代表・大坂英之さんに改めてお話を聞いた。

ーお店の創業はいつですか?

大坂さん:私が30歳の時、2016年9月なので今は7年目になります。

ーなぜ、ナポリタン専門店にしようと考えたのでしょうか。

大坂さん:もともとラーメン屋出身で、ラーメン屋として独立したいと考えていましたが、たまたま東京の新橋にあるナポリタン専門店である「スパゲッティのパンチョ」でナポリタンを食べた時にその味と『男一人で入れるスパゲッティ屋』というコンセプトに感動しました。
つくばの街は人口密度当たりのラーメン屋店舗数が日本一という超激戦区でもあり、『この街にはない、新しい業態をやろう』と、ナポリタン専門店にしました。

ーナポリタン専門店として苦労された部分はありますか。

大坂さん:つくばはラーメン屋が多いので、どこか食事に行こうとなったらまずラーメンは候補に挙がりますよね。やはりラーメンという文化は強いです。
ラーメンと同じくらいに『外食の選択肢にナポリタンを思い出してもらう』ことを、最初の二年間はずっと課題にしていました。
そんな中で2019年の末にテレビの取材が来て、放送の翌日から一気にお客さんが来てくれるようになり、『よし!これからだ!』というタイミングで2020年早々からコロナ禍がやってきて……。

ーコロナ禍は飲食店にとって本当に厳しい状況が続きましたね。

大坂さん:結局テレビ放送の前よりもお客さんが減りましたから、大打撃を受けました。
ただ、このまま時間を持て余すのは良くないと考えて、マーケティングやSNSの運用、スタッフのマネジメントやお店の仕組み作りなど、たくさん勉強して実践する機会にしました。

スタッフと作るストーリー

ー豊富な通常メニューに加えて、月替わりのナポリタンも始められたそうですね。

大坂さん:はい、1月はトマトケチャップを使わない「白ナポ」を出して、好評を博しました。今月(2月)は、「ケイちゃんトッピング」です。岐阜に「萩屋ケイちゃん」という鶏肉のブランドがありまして、そこの商品をナポリタンにトッピングしてしまおうと。
スタッフに岐阜県出身の人がいて、ケイちゃん好きということから採用しました。

ースタッフと共にストーリーを作り上げていく、というのが素敵ですね。

大坂さん:来月(3月)はまだ決まっていませんが、今度は奈良県出身のスタッフといろいろ考えていきたいと思っています。

ナポリタンの文化をどう繋いでいくか

ーナポリタンという料理は戦後に広まった日本独自のスパゲッティ料理ですが、この食文化は今後どのようにして次世代へ繋いでいくべきものなのでしょうか。

大坂さん:ある料理研究家に対して、めんつゆは使わずにちゃんとしただしの取り方で伝統を守ってくれ!というクレームがあったと言います。その料理研究家は、めんつゆを使うことが100年後に伝統となる、と返していて、全く同感だと思いました。
時代とともにいろいろなものが多様化していく中で、その時代において良いと思うもの、便利と思うものに関しては残しても良いし変えても良いんだと思います。やっぱり新しい部分も取り入れながら醸成させていくことが文化なんだと思います。
そういう考えで、これからもナポリタン専門店にたずさわっていきたいです。

ー「つくばのナポリタン」として、そしてつくばから各地へ「Banzai naporitan」が広がっていくのを期待しています。

大坂さん:バンザイ=ナポリタン、ナポリタン=バンザイと想起してもらえるフェーズへと向かっていきたいと思います!

茨城県つくば市の「Banzai naporitan(バンザイナポリタン)」は、店主のセンスの良さ、新しさ、ユーモアが詰まった楽しいナポリタン専門店であった。
ナポリタンに魂を注ぐ大坂英之さんの大いなる挑戦まだまだ始まったばかりである。

つくばへ行くことがあったら、是非立ち寄ってみてはいかがだろうか。
そして、豊富なトッピングメニューからお気に入りのナポリタンを見つけてほしい。

【Banzai naporitan(バンザイナポリタン】
茨城県つくば市桜3丁目8-4 アグレアーブル103
https://banzainaporitan.jp/

































































ライター

2010年3月著書「麺食力」(ビズ・アップロード)出版、2017年4月~「はま太郎」(星羊社)連載、2019年4月~リクルートHOTPEPPERグルメ「メシ通」執筆。2009年よりスパゲッティ・ナポリタン発祥の地・横浜で「日本ナポリタン学会」会長。マイクロツーリズムの楽しさを主に伝えていきます。

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