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空の旅人たちの秘密: 渡り鳥が長距離を迷わず飛べる理由は?

TOUYA化学系研究者

 渡り鳥は、繁殖や食料などの環境変化に対応するため、毎年定期的に長距離を移動します。春夏に南方から日本に渡って来る鳥を「夏鳥」、秋冬に北方から渡って来る鳥を「冬鳥」といいます。

V字編隊飛行の科学

 マガンをはじめとする多くの渡り鳥はV字形に列を作って飛びます。 それにより、先頭の鳥が風の抵抗を受け、空気の流れ(上昇気流)を利用して、後ろの鳥は少ないエネルギーで飛行できることで、長距離を飛ぶことが可能になります。 先頭を飛ぶ鳥は最も多くのエネルギーを消費するため、群れの中で先頭の鳥は定期的に交代され、疲労を分散させています。2014年にロンドン大学の研究チームが、詳しいメカニズムを発表しました。詳しく知りたい方は、ロンドン大学の記事をご覧ください。

 宮城県の「伊豆沼・内沼」は、ラムサール条約に登録された湿地で、北東ロシアからマガンがカムチャッカ半島、北海道、秋田県を経由し、約4,000kmもの長旅を終えて飛来します。渡り鳥は驚くべきナビゲーション能力を持っており、昼間に移動する鳥は太陽を、夜に移動する鳥は星の位置を利用して方向を定めています。また、地球の磁気を感知できると考えられており、迷子にならずに長距離の移動ができます。

「ねぐら立ち」と「ねぐら入り」

 マガンは神経質で非常に用心深く、夜はキツネなどの天敵に襲われる心配のない沼で眠り、昼は近くの水田で落穂や草の種子などを食べています。日の出とともにマガンが一斉に沼からエサ場へと飛び立つことを「ねぐら立ち」、夕方エサ場から沼に帰ってくることを「ねぐら入り」といいます。

マガンの魅力

 「マガン」の全長は約75cmで、翼を広げると150cmほどにもなる大型の水鳥です。そのマガンが一斉に飛び立つ様子や、集まってくる様子は圧巻で、多くの人々を魅了しています。鳴き声と羽ばたきの音が壮観なことから、環境省選定の「残したい日本の音風景100選」にも選ばれています。観察スポットが何箇所かありますが、こちらは2024年1月中旬に伊豆沼西側堤防付近から撮影した、ねぐら立ちの様子です。これらの鳥たちが繰り広げる自然の劇は、私たちに地球環境の大切さを思い出させ、自然との共生の重要性を教えてくれます。是非一度は伊豆沼を訪れて、渡り鳥の神秘的な美しさを体験してみてください!

化学系研究者

東京工業大学大学院の修士課程を卒業後、化学メーカーの研究者として従事。研究成果がメディアに取り上げられた経験有り。化学に関連する記事を書いています。

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