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宇宙が誕生と消滅を無限に繰り返している証拠を発見!?

中の人のキャベチです。

今回は「宇宙が無限ループしている証拠を観測!?」というテーマで動画をお送りしていきます。

去年、ロジャー・ペンローズ博士がブラックホールの特異点定理の功績で2020年のノーベル物理学賞を受賞しました。

そんなペンローズ博士は、宇宙は消滅と再生を繰り返しているとする「共形サイクリック宇宙論(CCC)」を提唱していることでも知られています。

今回はCCCの解説と、それにまつわる新発見を紹介します。

宇宙の終焉

Credit:NASA/WMAP Science Team
Credit:NASA/WMAP Science Team

これまでの研究で、宇宙は加速膨張していることが明らかになっています。

さらに膨張している宇宙を遡った先にある、全てが1点に集まっていた宇宙の始まりの瞬間は、今から約138億年前であるというのが通説となっています。

そんな宇宙も無限には続かず、いつか終焉を迎えると考えられています。

現在考えられている主な宇宙の終焉には、ビッグクランチ、ビッグチル、ビッグリップという3つのシナリオがあります。

それぞれ簡単に解説します!

Credit:design und mehr
Credit:design und mehr

ビッグクランチは、現在の加速膨張する宇宙がいずれ減速に転じ、最終的に再び1点に巻き戻ってしまうというシナリオです。

宇宙の始まりの瞬間まで巻き戻り、1点に収縮することをビッグクランチと呼びます。

ビッグチルは、宇宙が現在の膨張速度を維持し続けると起こると考えられているシナリオです。

宇宙が延々と膨張し続け、温度も物質の密度も極限まで低下します。

するともはや宇宙では新たな反応が起こらなくなり、冷たく真っ暗で何もない空間がただただ広がるばかりの寂しい死を迎えてしまいます。

ビッグリップは宇宙の膨張が加速し続ければ、ついには宇宙を構成すると言われている重力、弱い力、電磁気力、強い力という4つの力全てが、宇宙膨張の斥力に対抗できなくなってしまうというシナリオです。

こうなると銀河や恒星系が形を維持できなくなり、その後単体の恒星や惑星などの天体、さらには生命体を形作る結合も引き剥がされ、最終的には原子や素粒子単位ですら独立して存在するようになってしまいます。

様々な観測事実から、現在ではビッグチルが一般的に支持される理論となっているようです。

このように宇宙の終焉はどれも壮大なのですが、ハッピーエンドは一つもなさそうなのが寂しい所です!

共形サイクリック宇宙論(CCC)

Credit:maths.ox.ac.uk
Credit:maths.ox.ac.uk

それでは今回の本題の共形サイクリック宇宙論(CCC)の解説に入ります。

かなり難解なのですが、概要だけでもすごく面白いので、可能な限り紹介してみたいと思います。

CCCではこの宇宙はビッグチルが起こるような宇宙であり、しかもなんと「消滅と再生を永遠に繰り返している」と主張されています!

しかも宇宙の始まりと終わりは同じであり、スムーズに次の宇宙への転換が行われるため、現在の宇宙にも以前の宇宙の名残が存在しているそうです!

非常に長い年月が経つと、この宇宙の全ての物質がブラックホールに飲み込まれてしまうと考えられています。

ですがそんなブラックホールも、更に途方もない年月が経つと蒸発して消えしまうと考えられています。

ブラックホールが蒸発すると、宇宙にあるのはブラックホールから蒸発して残った、光子などの質量を持たない素粒子のみになってしまうそうです。

アインシュタインの特殊相対性理論によると、物質は速く動くほど時間の進みがゆっくりになり、周囲の空間が縮んで見えます。

速度の上限である光速にもなると、もはや時間や空間という概念が存在しなくなっているそうなんです。

質量を持たない光子などの粒子は光速で移動するため、光速で移動する粒子のみで構成された宇宙ではもはや何が時間で何が空間なのかはっきりしていません。

そんな状況は、まさに宇宙が始まる前の無の空間に似ています。

そのような未来の宇宙ではビッグバンが起こり、そこから新たな宇宙が始まります!

このように宇宙の終わりと始まりは「同じ」なんだそうです。

1つの宇宙の周期はアイオーンと呼ばれ、それが延々とループしています。

無限ループの痕跡を発見!?

Credits: Daniel An, Krzysztof A. Meissner and Roger Penrose
Credits: Daniel An, Krzysztof A. Meissner and Roger Penrose

この理論が仮に正しければ今の宇宙は少なくとも2代目以降の宇宙であり、今の宇宙には「ホーキング・ポイント」と呼ばれる以前の宇宙の名残が残っていると考えられています。

実は以前の宇宙から存在していた光子などの質量を持たない粒子にとっては新旧の宇宙の境界がなく、新たな宇宙にもスムーズに移動してくることができるのだとか…

そのような以前の宇宙からやってきた光子は、現在の宇宙の始まりであるビッグバンの残光と考えられている宇宙背景放射に紛れ込んで存在しており、特定の模様を形成しているそうです。

宇宙背景放射に紛れ込んだ以前の宇宙の名残は、「ホーキング・ポイント」と呼ばれ、それが本当に存在するのかどうか調べるため、観測が行われていました。

そんな中、2019年の8月になんと20か所のホーキングポイントが実際に発見されたと、ペンローズ博士自身の論文にて発表があり、これが共形サイクリック宇宙論の証拠であると主張されているわけなんですね!

これが本当に以前存在していた宇宙からの名残であれば、とんでもない大発見となりますね。

ですが宇宙背景放射はランダムでやってくるため、偶然でホーキングポイントと読み取れる模様が形成された可能性もあります。

仮に本当にホーキングポイントが存在するとしたら、宇宙背景放射の中から数万個単位で発見されるはずであり、20個では統計的に有意ではない、という反論もあります。

いずれにしても今回は非常に難しい話でしたが、宇宙が無限ループしていて、さらにかつての宇宙の痕跡が発見されたかもしれないというのは、本当にロマンがあるお話でした!

今回の関連で、以下の動画では「宇宙の始まりであるビッグバンは存在せず、過去が無限に続いていた」とする驚くべき説について紹介しているので、併せてご覧ください。

https://arxiv.org/abs/1808.01740
https://www.forbes.com/sites/jesseshanahan/2018/08/24/did-scientists-actually-spot-evidence-of-another-universe
https://www.maths.ox.ac.uk/node/36137
サムネイル:Samuel Velasco/Quanta Magazine

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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