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100日後に衝突する超巨大ブラックホール連星を新発見!?

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「100日後に衝突する超大質量ブラックホールを新発見」というテーマで動画をお送りしていきます。

地球から12億光年彼方にある銀河の中にある超大質量ブラックホール連星系が、今からたった100日後に衝突する可能性があると発表され、大きな話題を呼んでいます。

今回はそちらのニュースを解説していきます。

●ブラックホール同士の衝突

credit: SXS
credit: SXS

今回のニュースをより理解するために、まずは簡単にブラックホール同士の衝突という現象についておさらいしていきます。

ブラックホールとはその重力が大きすぎて、そこから光でさえも逃げだせない天体です。

ブラックホールのすぐそばに星が近づくと、強い重力で星がばらばらに壊され、吸い込まれていきます。

ブラックホールのほとんどは、大質量の星が進化の末に行きついた姿です。

太陽の質量の30倍以上の星がその最期を迎える瞬間、星の内部が潰れてブラックホールが形成されると考えられています。

非常に明るい大質量の恒星の多くは連星系を成しているという観測結果があります。

連星系のそれぞれの恒星がブラックホールになると、ブラックホール同士の連星系ができます。

連星系のふたつのブラックホールは、らせん状の軌道を描きながら互いに落ち込んでいきます。

両者が近づくにつれ、周りの空間のゆがみが増し、ついには合体して1つのブラックホールになります。

合体直後のブラックホールは激しく振動し、エネルギーを失いながら次第に落ち着いていきます。

Credit:R. Hurt - Caltech  JPL
Credit:R. Hurt - Caltech JPL

ブラックホールの衝突の過程では、強い重力波が発生します。

重力波とは、時空のゆがみが波として伝播していくものです。

ブラックホール同士が衝突すると、元のブラックホール同士の質量が足し算されたより巨大な質量を持ったブラックホールが生成されます。

ただし一部は重力波のエネルギーに変換されるため、単純な足し算よりも幾分軽くなっています。

Credit:R. Hurt - Caltech  JPL
Credit:R. Hurt - Caltech JPL

ブラックホールの衝突については、私たちの銀河系では100万年に1度の頻度でしか発生しないと考えられており、非常にまれな現象です。

しかしとてつもなくエネルギッシュな現象なので、地球から10億光年離れた場所で起きたとしても検出可能です。

その範囲には何百万もの銀河があるので、1年に数回はこのイベントを観測できるという見積もりになります。

実際にこれまでに何度もブラックホール同士の衝突による重力波が検出されてきましたが、どれも太陽の100倍以下の質量しか持たない、比較的軽いブラックホール同士の衝突現象ばかりでした。

超大質量ブラックホール同士の衝突が発生すればこれまでにないほど巨大な信号を検出でき、新たな発見もたくさんあることが期待されていますが、実際にそれが私たちが生きている間に起こる可能性は極めて低いです。

●100日後に巨大BHが衝突!?

Credit:Jiang et al. (2022)
Credit:Jiang et al. (2022)

そんな中、2022年1月27日とつい先日、カナダのペリメーター理論物理学研究所などの研究チームは、地球から約12億光年彼方にある銀河にて、衝突間近の超大質量ブラックホール連星系を発見したと発表しました。

研究チームは当初、2つのブラックホール連星系によるものと思われる信号を検出していました。

その後観測を続けていると、なんと信号の周期が徐々に短くなっていったそうです。

通常のブラックホール連星系であれば、近いと言っても十分に距離が離れているため、人間の寿命スケールではブラックホール同士の距離や信号の周期が変化することはありません。

つまり今回信号を放ったブラックホール連星系は、ブラックホール同士の距離が既に極めて近い所にまで接近していることが伺えます。

Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center
Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center

一つの解釈では、2つのブラックホールの質量は太陽の100万倍を超えており、「超大質量ブラックホール」に分類される可能性があるようです。

その場合、観測開始からたった3年で、ブラックホールの距離間隔は1光年から1光月にまで縮まっている計算になるそうです!

3年で距離が12分の1になるということは、衝突が間近であることがわかります。

このペースからして、衝突のタイミングは早ければたった100日後、遅くても3年以内に衝突するとみられています。

何万年後とかでも宇宙規模では「衝突間近」と表現されそうですが、今回の場合は人類規模で言っても間近と言えます。

これだけ近い将来に起こると予想される現象は宇宙では極めて珍しいです。

しかもそれが超大質量ブラックホールの衝突のような極めて珍しい現象ともなれば、今回このような信号を検出できたことは、極めて幸運であると言えます!

そして単に幸運なだけでなく、天文学において非常に大きく重要な謎を解明する手掛かりになる可能性もあります。

実は超大質量ブラックホールは非常に初期の宇宙から存在していることがわかっていますが、なぜそれだけ短い期間で、巨大な質量を獲得できたのかが理解されていません。

もしも今回の発表の通り、人類史上初めての超大質量ブラックホール同士の衝突を検出することができたら、超大質量ブラックホールがどのように進化したのか、より深く理解されるでしょう。

今回の関連で、ブラックホールの中に別の宇宙が存在するという非常に面白い説について以下の動画で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください!

https://www.inverse.com/science/black-hole-merger-2022
https://arxiv.org/pdf/2201.11633.pdf
サムネイルcredit: Future/Tobias Roetsch

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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