Yahoo!ニュース

ボイジャーが到達した太陽系深淵の「3D地図」が完成!?

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「太陽圏の3D地図が史上初めて完成!?」というテーマで動画をお送りしていきます。

●太陽圏とは?

Credit:NASA Goddard Space Flight Center Scientific Visualization Studio
Credit:NASA Goddard Space Flight Center Scientific Visualization Studio

太陽系の主である太陽は、太陽風と呼ばれる超高温のガスを超高速で常に放ち続けています。

太陽風は非常に高温であるために熱運動によって原子核と電子が電離してしまい、ガスがプラズマの状態になっています。

この太陽風は平均450km/s、温度100万度という状態で地球付近を通過し、地球の磁気圏と衝突することで極地で見れる美しいオーロラの原因ともなっています!

Credit: NASA/JPL-Caltech
Credit: NASA/JPL-Caltech

ですがそんな太陽風でも太陽から離れるにつれて減速し、最終的に太陽から約100auほど離れた所まで届くと、太陽と別の恒星間にある星間物質と混ざりあうと考えられています。

※1au=地球と太陽の平均距離≒1.5億

最終的に太陽風の速度が0になり、プラズマと星間物質が混ざり合う境界面をヘリオポーズと呼びます。

そしてこのヘリオポーズの内側の太陽風が届く領域を「太陽圏(ヘリオスフィア)」と呼んでいます。

●太陽圏の形状を知る

今から40年以上前に打ち上げられたボイジャー探査機はあまりに遠くまで離れて行ったため、1号は2012年8月に、2号は2018年11月にそれぞれ太陽圏を脱出し、星間空間に到達したと考えられています!

2022年現在、ボイジャー1号は太陽や地球から約155au、2号は約130auの位置にあります!

そして2機が太陽圏を脱出したのは、1号が太陽から約121au,2号が太陽から約119auの地点だったので、少なくとも太陽から見た方向や、さらに太陽活動に応じたタイミングによっても、ヘリオポーズまでの距離は変化するとみられます。

ボイジャーによって最も正確な太陽圏の果てまでの距離が求められましたが、あくまでそれは彼らが通過した場所と時間における数値に過ぎず、ボイジャーの力だけでは太陽圏全体の形状を把握することはできません。

Credit:NASA/Goddard Space Flight Center
Credit:NASA/Goddard Space Flight Center

ですが太陽圏の形状を把握する術は残されています。

地球を楕円型の軌道で周回する人工衛星「IBEX」は、太陽圏の果ての領域からやってきた粒子を検出することで、その形状を知ろうと試みています。

太陽から放たれた+の電荷を帯びたプラズマの粒子は、太陽圏の果てにある星間物質と衝突した際に電子を奪い取り、電気的に中性な原子(=ENA)へと変化し、その後地球の方向に戻ってきて、それをIBEXで検出できることがあります。

このENAの信号の強さは、元の太陽風の強さに依存するため、太陽風の強さが変化すると、その2-6年後には同様の変化がENAの信号にも見られるんだそうです。

この太陽風の強弱の変化のパターンが現れてから、IBEXが捉えたENAの信号に同様の強弱の変化がどれだけ遅れてやってくるのかという時差を求めることで、ENAが生成された太陽圏の果てまでの距離が理解できるんだそうです。

研究チームはこの手法を、「コウモリが超音波の反射を利用して洞窟内の形状を知るようなもの」と表現しています。

●太陽圏の3D地図が公開される

Credit:Daniel et al. (2021)
Credit:Daniel et al. (2021)

ロスアラモス国立研究所などのチームは、2009年-2019年までの太陽風の強弱の信号とIBEXが観測したENAのデータを照らし合わせたところ、非常に興味深い事実が明らかになったと、去年2021年の6月に発表しています。

まず、従来から太陽圏の形状は綺麗な球体ではなく、彗星のように太陽系の天の川銀河中心部に対する公転方向とは逆方向に長く伸びた構造をしていると考えられていましたが、IBEXはその予測が実際に正しいことを示しています。

ただしIBEXは太陽から350auよりも遠い距離については測定できないため、実際にはさらに遠方まで太陽圏が伸びている可能性が示されています。

一方で、太陽圏の果てのうち、ボイジャーが向かった太陽から最も近い面については、ボイジャーが観測したのと同様、110-120auの距離だけ離れているという結果が得られました。

これは今回の計測が正しいことを裏付けています。

そしてこの動画における上下の方向へは、太陽から150-175auほどの距離まで太陽圏が伸びているそうです。

全体的には弾丸のような形状をしていることがわかります!

今後も少なくとも2025年まではIBEXのミッションが続き、さらに同年の2025年からは、太陽圏の果ての探査を行うまた別のミッションもスタートする予定です。

今後もさらに正確な観測が続けられることで、私たちの太陽圏への理解が大幅に変わるときが近いかもしれません。

地球での詳細な研究の成果を、ボイジャーの正確な現地探査によって裏付ける…

打ち上げから40年以上経過した現在でも、ボイジャーは太陽圏の深淵領域の研究において偉大な成果を残し続けてくれているんですね。

また今回の関連で、ボイジャーはこれまでに、太陽圏を抜けた領域での「音」を検出することに成功しています。

太陽系の深淵の音について、以下の動画でボイジャーが捉えた実際の音声とともに詳細を解説しているので、併せてご覧ください。

https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4365/abf658
https://discover.lanl.gov/news/releases/heliosphere-mapping
https://voyager.jpl.nasa.gov/mission/status/

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

宇宙ヤバイchキャベチの最近の記事