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ブラックホールが星を破壊する瞬間を捉えた最新の激レア映像がヤバすぎる

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「ブラックホールが恒星を破壊する瞬間」というテーマで動画をお送りします。

●ブラックホールが恒星を破壊する一部始終

2019年9月、地球から3億7500万光年という非常に遠く離れた世界にある「2MASX J07001137-6602251」という銀河の中心部にて、はっきりとした増光現象「ASASSN-19bt」が観測されたとの発表がありました。

増光を観測したのは超新星爆発を観測する「ASAS-SN」という20基の天体望遠鏡から成る観測システムでしたが、増光が起こった領域は偶然にも太陽系外惑星を発見する別のシステムである「TESS」も観測を行っていました。

Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center
Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center

ASASSN-19btを観測したのは2019年の1月29日でしたが、TESSは同じ空の領域を27日間も連続で観測し続けるため、その8日前の1月21日から増光の一部始終を捉え続けていました。

これだけ強い光を放つ代表的な現象としては超新星やガンマ線バーストが挙げられますが、今回はグラフのように増光のペースが穏やかだったため、それらとは異なる現象であると考えられました。

Credit: NASA's Goddard Space Flight Center
Credit: NASA's Goddard Space Flight Center

増光ペース以外にも最大光度や発生位置などの情報から、ASSASN-19btは銀河の中心にある太陽の600万倍程度の質量を持つ超大質量ブラックホールによって太陽程度の質量を持つ恒星が砕かれ、その後ブラックホールを取り巻く降着円盤となる瞬間に放たれた光であると考えられています。

このようにブラックホールに接近しすぎしまい、天体が破壊されてしまう現象は、「潮汐破壊現象(TDE)」と呼ばれています。

ブラックホールがものを飲み込む際、スパゲッティのような非常に細長い形状に変形させてしまうので、その見た目通りスパゲッティ化現象とも呼ばれています。

TDEが天の川銀河で起こるのは1万~10万年に1度程度なんだそうです。

超新星爆発が天の川銀河で起こるのが100年に1度なので、TDEは本当に珍しい現象です。

破壊された恒星のガスはブラックホールに一気に流れ込み、重力によって光速に近い速度にまで加速させられ、それらが擦れ合う事で数億単位という膨大な摩擦熱が生じ、それによってとてつもないエネルギーを放ちます。

一時的ではありますが、なんと周囲にある億単位の星々全てを合わせた銀河全体の明るさを凌駕するほどのとてつもない明るさで輝くんだそうです!

●史上最近距離でのTDE観測事例

Credit:ESO/Digitized Sky Survey 2/N. Risinger (skysurvey.org)
Credit:ESO/Digitized Sky Survey 2/N. Risinger (skysurvey.org)

そして2020年10月には「AT2019qiz」と命名された新たなTDEが、地球から2億1500万光年離れた銀河中心で発見されました。

先述のASASSN-19btが3億7500万光年彼方での発生だったので、それと比べても非常に近い場所での発生であり、これまでのTDEの観測史上最も近い距離での発生だそうです。

AT2019qizを増光し始めから消えるまでの6か月にわたり、様々な波長での電磁波で観測した結果、ほとんどが可視光線と紫外線で光っていたことも明らかになっています。

さらにその光から、AT2019qizが起きた瞬間、太陽の100万倍以上もの質量を持つ超大質量ブラックホールが、太陽とほぼ同等の質量を持った恒星を砕き、恒星はその質量の半分程度を一気に失ったという事も判明しています!

比較的近い位置での発生だったということもあり、これまでにないほどに詳細な研究が行われ、TDEの性質がより鮮明になってきています。

●数十年前の電波データからTDEを発見

Credit:Vikram et al. (2022)
Credit:Vikram et al. (2022)

最後に、今年2022年1月には、カリフォルニア工科大学の研究チームが、史上2例目となる電波でのTDEの観測に成功したと発表しました。

TDEは非常に高温を伴う現象であり、主にX線や可視光線で発見されることが多いようです。

ですがそのような光が地球に辿り着く前に塵の中を通り過ぎるなどして波長が伸び、地球では電波として観測される場合もあります。

研究チームはアメリカにある電波望遠鏡群「VLA」が過去数十年にわたって観測した電波のデータを精査したところ、1990年代半ばに強い電波を放っていた「J1533+2727」と呼ばれる天体が、2017年には急激に暗くなっていることを発見しました。

その後また別の望遠鏡の観測データから、J1533+2727は1986年~1987年にかけてさらに明るかったことが判明しました。

現在では最も明るかった時と比べて500分の1の明るさにまで減光しているようです。

Credit: Sophia Dagnello, NRAO/AUI/NSF
Credit: Sophia Dagnello, NRAO/AUI/NSF

これまでの観測データから、新発見の増光現象は、地球から5億光年彼方の銀河中心にある超大質量ブラックホールがその周囲の恒星を破壊し、亜光速の電波ジェットを放出したために検出された、TDE由来の現象であると判明しました。

これまでに電波ジェットに関連するTDEは3つ発見されているものの、他のものは新発見のTDEの10倍以上も遠く離れた銀河で発見されていたため、比較的地球に近い宇宙で発見された史上初の電波ジェット由来のTDEとなります。

最近観測技術が急激に発展してからのたった数十年の間に、近傍宇宙で発生した電波ジェット由来のTDEが発見できるということから、このような現象が従来の予想よりも一般的なものである可能性が高まりました。

今後もさらにTDEの観測が行われ、それに伴って新事実が明らかになっていくことでしょう!

https://www.nasa.gov/feature/goddard/2019/nasa-s-tess-mission-spots-its-1st-star-shredding-black-hole
https://www.eso.org/public/news/eso2018/
https://svs.gsfc.nasa.gov/13805
https://www.caltech.edu/about/news/black-hole-devours-a-star-decades-ago-goes-unnoticed-until-now
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ac2b33
サムネイルcredit:ESA/C. Carreau

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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