Yahoo!ニュース

ホワイトホールとは?存在を示す唯一の天体現象がヤバイ

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「ホワイトホールの存在を示す唯一の天体現象」というテーマで動画をお送りしていきます。

●ホワイトホールとは?

Credit:Baperookamo
Credit:Baperookamo

ホワイトホールとは、アインシュタイン方程式において、時間の向きがブラックホールとは逆になっている天体として予言される天体です。

ブラックホールは数学的にも観測的にも、その存在はほぼ確実視されていますが、一方でホワイトホールについては発見されたことがないどころかその存在自体が疑問視されているため、あくまで仮説上の天体です。

予想されているホワイトホールの性質を理解するために、簡単にブラックホールの構造についておさらいします。

ブラックホールの中心には、ブラックホールの全ての質量が集中した体積0の一点である「特異点」が存在していると考えられています。

特異点の周囲では想像を絶するほど重力が強くなっていると考えられていて、そこから脱出するために必要な速度は、この世の物質の速度の上限である光速を超えていると考えられています。

特異点から離れていき、脱出速度が丁度光速となる境目は、「事象の地平面」と呼ばれています。

その領域以内では脱出速度が光速を超えているので、あらゆる物質も、光も、情報も出てくることは絶対にありません。

Credit:Baperookamo
Credit:Baperookamo

では話をホワイトホールに戻すと、これはブラックホールと時間の向きが反対になっているので、中心の特異点からあらゆる物質が吐き出されていて、事象の地平面の内部には絶対に入ることができない、という性質を持ちます。

Credit:ESO/L. Calçada
Credit:ESO/L. Calçada

さらにブラックホールとホワイトホールは、ワームホールで繋がっているという説もあります。

ワームホールとは、宇宙空間におけるショートカットです。

この画像のように通常であれば太い矢印のように空間を進んで移動するしかないところを、ワームホールを使えば細い矢印のようにショートカットできるというわけです。

ワームホールの入り口はブラックホールになっており、出口はブラックホールの対となる概念であるホワイトホールであるとされています。

ホワイトホールやワームホールは理論上は存在する可能性があるとされるものの、実際にその候補が観測されたことは一度もありません。ただ1つの例外を除いては…

●不可思議なγ線バースト

Credit: NASA/Swift Team
Credit: NASA/Swift Team

2006年、地球から約16億光年彼方にある銀河にて、GRB 060614と命名されたガンマ線バーストが発生しました。

ガンマ線バーストはその名の通り、電磁波の中で特に波長が短くエネルギーが高いガンマ線が、比較的短期間だけで大量に放射される現象です。

さらにガンマ線バーストはその継続期間が2秒未満のものをショートガンマ線バースト、それ以上のものをロングガンマ線バーストと大きく分類できます。

ショートガンマ線バーストの主な発生源は中性子星やブラックホールによる衝突現象だとされています。

そしてロングガンマ線バーストは、非常に大質量の恒星が一生の最期に巨大な超新星爆発を起こし、ブラックホールが形成される際に、何らかのメカニズムで発生するものであるとされています。

Credit: A. Gal-Yam (Caltech)
Credit: A. Gal-Yam (Caltech)

GRB 060614はその継続期間が102秒間と長くロングガンマ線バーストに分類されます。

そのため超新星爆発と同時に起きており、ガンマ線バーストの光が消えた後も超新星の光が観測されることが予測されていました。

にもかかわらず、6月27日に発生源の天体がある銀河でガンマ線バーストの残光が明確に確認されてから約20日後の7月15日には、ガンマ線バーストの残光が消え、さらには超新星爆発の光も確認できなかったんですね。

●ホワイトホール発生の可能性!?

GRB 060614に対する説明の一つとしては、何らかの原因で超新星の光が遮られた可能性が挙げられています。

ただしそもそもGRB 060614が発生した銀河は小さい銀河であり、大規模な超新星とロングガンマ線バーストを起こすような、大質量の星がほとんど存在していない事が知られています。

では超新星が原因ではないとしたら、どんな現象が原因となるでしょうか?

従来の理論では説明できない未知の現象が発生した可能性なども挙げられていますが、その中の一つに何と「ホワイトホールの発生」があります。

ホワイトホールは先述の通り観測されたことはなく、仮説上の天体に過ぎませんが、理論的にはこれが発生した場合、比較的短期間で周囲に膨大なエネルギーを吐き出し、その後跡形もなく消滅してしまうそうなんです。

これはまさにGRB 060614が起こった後に残った天体や現象が何も観測されなかった理由を上手く説明できます。

そのためGRB 060614はこれまでで唯一、ホワイトホールが出現した可能性がある現象として知られているのです!

もしかするとこの宇宙のどこかのブラックホールに飲み込まれた物質が、102秒間にわたって形成されたホワイトホールから吐き出され、それを地球からGRB 060614として観測できているのかもしれません。

Credit:Baperookamo
Credit:Baperookamo

ただしこれはあくまで原因候補の一つにすぎず、実際にホワイトホールが発生したという証拠があるわけでもないですし、現実的な可能性としては極めて低いと言わざるを得ないでしょう。

ですが今後このような既存のモデルでは説明できない現象をたくさん観測していった先に、ホワイトホールのようなSFの中にしか存在しないと考えられている天体が実在していると結論付けられることがあるかもしれません。

それが今から非常に楽しみです!

https://www.nasa.gov/mission_pages/swift/bursts/hybrid_grb.html
https://phys.org/news/2011-05-small-white-holes.html

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

宇宙ヤバイchキャベチの最近の記事