Yahoo!ニュース

38億年前の金星と火星には液体の海があり、生命もいた!?

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「火星と金星の38億年前の姿」というテーマで動画をお送りします。

現在は、太陽系が誕生してから46億年が経過したと考えられています。

長い太陽系の歴史の中で、38億年前の岩石惑星は現在とは全く異なる姿をしていたことがわかってきました。

今回の動画では、岩石惑星の中でも特に火星と金星の大昔の姿にまつわる最新の科学的な理解を解説していきます。

●38億年前の火星と海

現在の火星は、地表の平均温度が約-70度と非常に寒く、大気圧は約0.007気圧しかありません。

当然その地表に液体の水など存在していません。

しかしこれまでの火星探査の中で、現在の火星の地表には、38億年より前に液体の水が流れた跡のような「流水地形」が数多く発見されています。

このような観測的事実から、かつての火星は地球のような温暖かつ豊富な大気を持つ環境であり、液体の水や海も存在したことがほぼ確実視されています。

しかしここで問題点があります。

生まれたての太陽は今より暗く、放射エネルギーは今の70%ほどしかなかったと考えられていますが、それを考慮してシミュレーションをした結果、大気中の二酸化炭素と水蒸気による温室効果だけでは液体の水が存在するような環境を再現できませんでした。

そこで東北大学の研究チームは、当時の大気に数%の水素が含まれていた場合、二酸化炭素と水素が衝突することで赤外線の吸収が大きくなり、この効果によって液体の水が存在できるほどの十分な温暖化が起きることを示しました。

○火星表面から海が消滅した時期

ではかつて火星表面に存在していた海は、いつ頃消滅してしまったのでしょうか?

東京大学などの研究チームは、火星表面にある巨大な線状地形である「リンクルリッジ」の形成年代を調べました。

リンクルリッジは火星の内部が冷却され、火山活動が停止後に地殻で生じる収縮や歪みにより形成された「しわ」のような地形です。

火星表面に海が存在する時代にリンクルリッジが形成されても、浸食によってかき消されしまうため、現存する中で最古のリンクルリッジが形成された年代が、おおよそ海が存在しなくなった年代であると推定できます。

実際に、現存する最古のリンクルリッジは38億年前に形成されたものだったことから、その頃に火星で大規模な気候変動が起こり、現在のように乾燥した惑星へと変化していったと見られています。

38億年前の火星は、海を持つ温暖な環境から乾燥した環境へ変化した、激動の時代を経験していたのかもしれません。

●太古の金星と海

現在の金星の環境は、表面温度の平均が460度、大気圧が地球の90倍以上、硫酸の雨が降るなど、地球上の生命にとっては地獄のような環境が広がる惑星です。

また現在の金星大気には地球大気の10万分の1というわずか水蒸気しか含まれておらず、極めて乾燥しています。

金星は過酷な環境を持つゆえに探査が難しく、現在でもわからないことも非常に多い惑星ですが、これまでの研究により、かつての金星には大量の水分子が存在していたことが示唆されています。

具体的な根拠の一つとして、大気中の水素と重水素の存在比が挙げられます。

これら水素の同位体は、原子核内の中性子の数が異ります。

金星大気では、水素に対する重水素の割合が地球大気における割合と比べて100倍以上も大きいのです。

これはかつて金星大気中に大量の水分子が存在したものの、それが大気上層に昇ると太陽からの紫外線などの影響で水素分子と酸素分子に分解され、

水素分子の中でも軽い水素が特に高い割合で宇宙空間へ逃げて行った結果であると考えると、うまく説明が可能です。

太陽系が誕生して間もない頃、太陽の放射エネルギーは現在の70%程度しかなかったこともあり、金星に存在した大量の水分子は、地表を覆う液体の海として存在していた可能性があると考えられています。

今から38億年前、金星には海があり、そこには生命も存在していたのかもしれません。

○金星表面から海が消滅した時期

では金星表面の液体の海はいつ頃まで存在していたのでしょうか?

これには幾つかの説が存在しています。

まず、30億年前には蒸発してしまっていた説があります。

この場合当時の海の平均水深は300mで、地球の平均水深が3800mであるのと比べるとかなり浅かったと考えられています。

また、今から7億年前という比較的最近まで存在していて、さらに金星の歴史の半分程度にあたる20~30億年間という長期にわたって安定的に海が存在していたという説もあります。

しかし今から約7億年前、恐らく火山活動に関連した何らかのメカニズムで大量の二酸化炭素が地中から大気中に排出され、それが岩石に再吸収されなくなかったそうです。

その結果、暴走温室効果が発生して、現在のような超高温の惑星へと変貌したというシナリオです。

このシナリオでは、7億年前の二酸化炭素大放出イベントがなければ、海が存在する安定した温暖な環境が現在まで続いていた可能性もあるとのことです。

最後に、歴史の中で海が全く存在しなかったという説もあります。

今から40億年ほど前、金星表面に存在していたあらゆる水分子は高温のため水蒸気の状態でした。

それが地表に降る雨となり海を形成するには、金星が数千年単位で冷え続ける必要がありますが、そのためには金星表面が太陽光で温められるのを防ぐ雲が必要であるとされています。

金星表面で雲が形成できる可能性はあったものの、それは比較的涼しい夜側の面のみであり、昼面は高温すぎて雲が形成されず、太陽光を防げなかったと考えられています。

それどころか夜側の面のみに形成された雲は強力な温室効果を発生させ、さらに金星表面の温度を上昇させてしまいました。

結果として、金星の表面温度は歴史の中で一度も液体の海が存在できるような温度まで下がらなかったそうです。

そしてこの説では、地球と太陽の距離が少し近かったり、若い頃の太陽のエネルギーが今くらい強かったりしたら、地球も金星と同じ結末を辿っていた可能性もあると指摘されています。

火星や金星に限らず、他の天体の現在の環境やその歴史を知ることで、生命を育む豊かな海が現在でも安定して存在し続けている地球の環境が、いかに奇跡的な偶然の上で成り立っているのかが理解できます。

今後も太陽系の天体の研究が進み、生命に関する新発見がもたらされることに期待しましょう。

https://www.sci.tohoku.ac.jp/news/20200302-10984.html
https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2021/7493/
https://www.wakusei.jp/book/pp/2004/2004-1-02/2004-1-02.pdf
https://www.isas.jaxa.jp/ISASnews/No.250/ken-kyu.html
https://www.sciencealert.com/oceans-may-have-once-graced-venus-before-it-became-a-hell-planet
https://meetingorganizer.copernicus.org/EPSC-DPS2019/EPSC-DPS2019-1846-1.pdf
https://www.space.com/planet-venus-could-have-supported-life.html
https://phys.org/news/2019-09-venus-habitable.html
https://www.eurekalert.org/news-releases/931214
https://www.sciencealert.com/there-s-no-way-venus-could-ever-have-had-oceans-new-research-finds
サムネイルCredit:Jurik Peter/Shutterstock.com

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

宇宙ヤバイchキャベチの最近の記事