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オールトの雲の常識が覆った!太陽系外由来の巨大惑星が眠っているかも?

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「オールトの雲の定説が覆る新発見」というテーマで動画をお送りします。

太陽系の果てには、「オールトの雲」という構造が広がっていると考えられています。

本動画ではそんなオールトの雲の基本的な内容を解説し、それに関する定説が覆った新発見まで紹介していきます。

●オールトの雲とは?

オールトの雲は、太陽系全体を球殻状に包み込むように存在する、太陽を公転する無数の小天体が集まった領域です。

※1au(天文単位)=地球と太陽の平均距離≒1.5億km
※1au(天文単位)=地球と太陽の平均距離≒1.5億km

諸説ありますが、オールトの雲は数千au~10万au(1.5光年)程度の範囲に広がっていると考えられています。

今から45年以上前に打ち上げられたボイジャー1号は、現在地球や太陽から160au以上離れた位置にある「最遠の人工物」として知られており、今もなお17km/sという猛スピードで太陽系の外へと直進中です。

そんなボイジャー1号ですら、オールトの雲の果てに辿り着くのに1万年以上かかります。

それだけオールトの雲はとにかく遠くにある、広大な領域であり、そんな中に実に兆単位の小天体が存在していると考えられています。

広く信じられている定説によると、オールトの雲の天体は、太陽系の形成から間もない初期、太陽系内部にあった小天体が巨大惑星の重力により軌道を外側に追いやられたことで、オールトの雲の構成員となったと考えられています。

初期の太陽系において、巨大惑星の重力で追いやられた小天体の遠日点が1万au程度になると、近傍の恒星や天の川銀河全体からの重力的な作用により、小天体の近日点はさらに外側へと追いやられます。

このようにして、太陽から数千~10万auの球殻状の領域に、無数の小天体が集まったオールトの雲が形成されました。

オールトの雲を構成する天体は太陽光の反射、または自身が放つ微弱な赤外線でしか検出されないため、非常に暗く、これまで一度も発見されたことがありません。

ですが地球近傍に接近し、近日点付近で観測された「長周期彗星」の公転軌道を分析すると、遠日点が太陽系全体を包み込むように全方向に分布していることから、このような「彗星の故郷」の存在が強く信じられています。

なお、より公転周期が短い「短周期彗星」のほとんどが、太陽系惑星が公転する軌道面とほぼ変わらない方向から到来します。

そのため短周期彗星の故郷である「エッジワース・カイパーベルト」は、惑星軌道をリング状に包み込む平面的な形状をしていると考えられています。

●オールトの雲は居候だらけかもしれない

2021年8月に発表された研究によると、オールトの雲を構成する天体の大部分は、定説とは裏腹に他の惑星系で誕生し、星間空間を旅して一時的に太陽系へとやってきている「恒星間天体」である可能性が示されました。

人類はこれまでに、2017年の「オウムアムア」と、2019年の「ボリソフ彗星」という2つの恒星間天体を発見したことがあります。

恒星間天体とは、どの恒星の重力にも捉えられていない、恒星間を自由に飛び回っている天体のことです。

地球に近付いてきた天体の位置と太陽に対する速度を分析すると、太陽に対する公転軌道が計算されます。

非常に速い速度を持ち、太陽の重力に拘束されず太陽系外へと旅立っていく軌道を持つ天体が「恒星間天体」に分類されます。

研究チームは2019年のボリソフ彗星の発見例をもとに、どれだけの数の天体が太陽系外からやってきて、それらがオールトの雲の構成員となっているのかを統計的に分析しました。

太陽系にやってくる恒星間天体のうち、地球から観測できるほど内部に入り込んでくるものはごく一部に過ぎません。

最も外側のオールトの雲を通過するだけの天体は、非常に多いと考えられます。

分析の結果、オールトの雲を構成する天体の半数以上が、太陽系外を起源とする「居候」である可能性が示されました。

ただしまだ観測データに不確実性が残っているので、より詳細なデータに基づいた分析が必要とされています。

●太陽系外が起源の惑星が存在するかも?

また別の研究で、コンピュータシミュレーションにより、オールトの雲内に別の惑星系由来の惑星質量天体が存在する可能性が2023年6月に発表されました。

惑星質量天体が主星の質量を振り切って星間空間に飛び立ち、自由浮遊惑星となるには、非常に速い速度が必要です。

そのため外部からやってきた自由浮遊惑星を、また別の恒星が重力で捕らえるのは非常に難しいことです。

しかし天の川銀河からの引力で自由浮遊惑星が減速することで、別の恒星がそれを捕らえられる可能性があります。

研究チームによると、太陽系が誕生から現在に至るまでに経験してきた状態にも依存しますが、太陽系は数%程度の確率で自由浮遊惑星をオールトの雲内に捕獲できる可能性があるとのことです。

また、惑星質量天体が太陽系内部で形成され、オールトの雲内に流れ着く確率は0.5%に過ぎず、外からやってくる確率の方がずっと高いそうです。

無数の小天体から惑星サイズの天体まで、オールトの雲は意外にも多様性にあふれたグローバルな場所なのかもしれません

https://www.space.com/interstellar-comets-more-common-solar-system
https://earthsky.org/space/interstellar-objects-dominate-oort-cloud/
https://academic.oup.com/mnrasl/article-abstract/507/1/L16/6353622
https://earthsky.org/space/captured-planet-oort-cloud-solar-system/
https://www.universetoday.com/162077/there-could-be-captured-planets-in-the-oort-cloud/
https://arxiv.org/pdf/2306.11109.pdf
https://astro-dic.jp/oort-cloud/

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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