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最強宇宙望遠鏡による初期宇宙観測で、「予想の50倍」の数の巨大ブラックホールが発見される

Credit: NASA’s Goddard Space Flight Cent

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「定説が覆るほど大量の巨大BHを初期宇宙で新発見」というテーマで動画をお送りします。

東京大学を中心とした研究チームは、史上最強の宇宙望遠鏡「ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)」の観測データから、120~130億年前(誕生から10~20億年後)の宇宙に存在する、活動的な超大質量ブラックホールを伴う銀河核(活動銀河核)を、予想をはるかに超える個数で新たに発見しました。

研究成果は2023年12月に発表されています。

●初期宇宙のブラックホールの謎

この宇宙には非常に多くのブラックホールが発見されており、特にほとんど全ての銀河の中心部には、太陽の数百万~数百億倍の質量に相当する、超大質量ブラックホールが存在していると考えられています。

そして超大質量ブラックホールは、宇宙誕生後たった数億年後の非常に初期の宇宙でも発見されています。

ですが実は、このような短期間でこれほど大質量のブラックホールが形成されたメカニズムについては、はっきりとは解明されていません。

「ブラックホールは胃袋は無限だが口は有限」と例えられるように、ブラックホールは時間をかければ際限なく物質を飲み込むことができるものの、飲み込めるペースには限界があるのです。

では超大質量ブラックホールはいつ頃、どのようにできたのでしょうか?

その謎を知るために、初期宇宙におけるブラックホールの探索が行われています。

○遠方のブラックホールの発見方法

ブラックホールの降着円盤の周囲には、降着円盤から放たれた紫外線で電離した水素のガス(広輝線領域)が存在し、その周囲には巨大なドーナツ状の分子雲が存在すると考えられています。

ドーナツ状の分子雲の内側にある広輝線領域からは、波長が比較的広範囲にわたる特有の電磁波が放たれます。

これはブラックホールの周囲の構造だけに見られる、特有の信号です。

遠方の銀河からやってきた電磁波の波長ごとの強度(スペクトル)を調べたとき、広輝線領域が放つとみられる特有の信号が浮かび上がれば、そこに活動的な超大質量ブラックホールが存在すると理解できるのです。

●JWSTによる新発見

2023年12月、東京大学を中心とした研究チームは、JWSTの観測データから、120~130億年前(誕生から10~20億年後)の初期宇宙に存在する活動的な超大質量ブラックホールを伴う銀河核(活動銀河核)10個を新発見したと発表しました。

この発見の奇妙な点としては、発見数が予想外に多すぎることが挙げられます。

これまでの地上の望遠鏡を用いた観測では、当時(120~130億年前)存在していたブラックホールを探すために、活動銀河核の中でも特に明るい分類である「クエーサー」が観測対象に選ばれていました。

当時の宇宙で、クエーサーに分類される銀河は1000個に1個以下の割合であり、クエーサーは非常に珍しい天体であると考えられてきました。

このクエーサーの観測をもとにした推定によると、今回のJWSTによる狭い範囲の観測で写った185個の銀河に存在する超大質量ブラックホールはたった0.2個、つまり1つも発見されない可能性が高いと考えられていました。

しかし実際には、185個の銀河のうち、超大質量ブラックホールを含む活動銀河核が実に10個も発見されました。

これは当初の想定(0.2個)の50倍に相当する数です。

○さらに多くのブラックホールがありそう

今回ブラックホールが存在すると特定できたのは、活動銀河核のうち、波長が比較的広範囲にわたる特有の電磁波を放つ「I型」に分類されるもののみです。

中にはこのような特有の信号が見られない「II型」に分類される活動銀河核も存在します。

I型とII型の違いは、ブラックホールの周囲を取り巻くドーナツ状の巨大分子雲の内部を、地球から見下ろせるかどうかです。

見下ろせる角度にある場合、特有の信号を放つ「広輝線領域」が見えるので、I型に分類され、見下ろせない角度にある場合、「広輝線領域」がドーナツに隠れて見えないため、II型に分類されます。

今回特定されたのはI型のみなので、II型も含めると、ブラックホールを持つ活動銀河核がさらに多く存在すると考えられます。

○その他注目すべき点

今回ブラックホールが発見された画像では、ブラックホールによる明るい点光源だけでなく、その周囲の銀河自体の明るさも写っています。

しかも色や形も多種多様です。

このことからも、様々な銀河の中心部に活動的なブラックホールが普遍的に存在していた可能性が示されています。

そして、新たに発見されたブラックホールの質量も判明しており、太陽の100万~1億倍だったそうです。

これは現在の宇宙に存在する同規模の銀河が持つブラックホールよりも10~100倍大きく、当時から大規模なブラックホールがあったと言えます。

一方、クエーサーの持つブラックホールと比べると100分の1程度の重さであることから、これらのブラックホールが成長過程である可能性があるといえます。

なぜこれほど初期から超大質量ブラックホールが多く存在していたのでしょうか?

この辺りは、未だ深い謎に包まれています。

効率的にブラックホールが成長する特殊なメカニズムがあったのでしょうか?

この辺りの謎を解明するために、JWSTを筆頭とした初期宇宙におけるブラックホールの研究が進められていくことでしょう。

https://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/news/14512/
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ad029e
https://astro-dic.jp/broad-line-region/

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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