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コンクリートミキサー車を徹底レビュー

矢田部明子自動車ライター

自動車ライターの矢田部明子です。今回は、関東宇部コンクリート工業株式会社相模原工場にて、コンクリートミキサー車をレビューしていきます!

ちなみに皆さんは、コンクリートミキサー車を間近でジックリと見たことはありますか?街中でドラムをぐるぐる回しながら走っているところを見かける人は多いと思いますが、実際に装備されている機能の1つ1つについて知っているという人は少ないはず。ということで、今回はコンクリートミキサー車の仕組みや生コンクリートについて詳しくレポートしていきます!

この記事では最低限押さえておきたいポイントを、動画では重箱の隅をつつくように詳しく解説をしているので、宜しければご覧になってみて下さい↓

コンクリートミキサー車

今回紹介するコンクリートミキサー車は、こんなクルマ↓

「トラックアジテータ」が正式名称ですが、一般的には「コンクリートミキサー車」の愛称で親しまれています。

荷台にあるドラムをグルグル回しながら、工事現場まで生コンクリートを運ぶ仕事をしてくれるクルマです。ちなみに、「生コンクリート」とは、固まっていない状態の柔らかいコンクリートのことです。コンクリートミキサー車は、ドラムをゆっくりと回転させ混ぜることで、材料が混ざった状態のまま工事現場まで生コンクリートを運ぶことが出来るのです。

今回ご紹介するのは、日野 レンジャーというトラックを生コンクリートミキサー車用にカスタムした車両となっています。記事が公開される頃は、みんなの街のどこかを走っていることでしょう!

その1 気になる装備

フロントフェイスは普通のトラックですが、横から見るとその差は一目瞭然。トレードマークのドラムが、一際目立っています。ということで、機能の一つ一つをチェックしていきましょう!

【外観】

水タンク

その名の通り、水の入ったタンクになります。生コンクリートはすぐに固まり始めてしまうため、工事現場での作業が終わったら車両に付着したコンクリートを、このタンクに溜まっている水で即座に洗います。

ドラム

ここに生コンクリートを積み込み、回しながら運んでいきます。生コンクリートの原料は、セメント&砂利&砂&水&混和剤などですが、それぞれの比重が違うため回さずに運んでしまうと、砂利など比重の重い材料は下に沈み、軽い水は浮き上がって分離してしまうのだそうです。そのほかにも、常に混ぜておかないと固まりやすいということでした。そういった状態を防ぐために、ドラムを回しながら運ぶということです。

スイッチは、サイド後方にあるコントローラーで行います。ここを左右に回すと、ドラムが回り始め、回転速度&回転方向を調整します。ダイヤルを左に回すと右回転(排出回転)、右に回すと左回転(攪拌回転)となります。左回転は輸送中、右回転はドラムの中にある生コンクリートをドラムから排出する時に使います。

速度を調整できるようになっているのは、現場によって早く下ろしてほしい時と時間をかけて下ろしてほしい時など、様々なオーダーがあるからとのことでした。

排出口

排出口は、左右に180度、上下に動くようになっています。まさに…変幻自在!

階段(ステップ)

この階段を登ると、コンクリートの積み込み口&排出口に。コンクリート排出時は、異物の混入が無いかなどを上からチェックするそうです。また、登る際は安全帯を必ず着用することが義務付けられている&昇降手順をしっかり守らなければいけないとのこと。

スイッチボックス

生コンクリート投入口のカバーを開閉する&排出口付近を照らすライトのスイッチがありました。また、1番右のスイッチは、排出口に付いた生コンクリートを水で流す際に、ノズルから水を出すスイッチでした。

レバー

スイッチボックスの下にあるレバーを引くと、ブレード、ホッパーなどから水が流れるようになっています。こうすることで、手の届きにくいところに残っている生コンクリートも綺麗に洗い流すことが出来ます。

洗車ホース

車両に付いたコンクリートを掃除するためのホースは、レバーを引くと水が発射する仕組みになっています。

ちなみに、燃費は2kmから2.5kmとのこと。色々な意味で……、すごい……!

運ぶ際の注意点

1時間30分以内に工事現場まで運ばなければ、固まり始めるという生コンクリート。時間との勝負になってくるので、経験豊富なドライバーさんでも事故渋滞などの避けられないアクシデントが起こると、間に合うかヒヤヒヤしてしまうとのことでした。そのため、現場には時間内に届けることが可能な立地にある工場からしか出荷しないそうです。ちなみに、距離にすると5km〜15km圏内ということです。

生コンクリートは、まさに生き物!その日の気温や季節、運搬時間によって混和剤の量などを調整しているそうです。そして、どう調整するかは工場の判断ということでした。これぞ、職人技です。

【車内】

パッと見た感じは、至って普通のトラックです。個人的なイメージとして、配線が沢山並んでいてメカメカしいのを想像していたのですが、そんなことはありませんでした。

コントローラー

センターコンソール部分に、ドラムの動きを調節するコントローラーは、投入口を開閉するためのスイッチなどが付いています。

バックモニター

大きなドラムを荷台に積んでいるので、後ろが全く見えません。よって、後方はバックモニターで確認します。

無線機

常にどこにいるかの連絡を工場の出荷室と取るそうです。

【出荷室】

何台ものパソコンが設置してあり、中央に立つとエヴァンゲリオンの碇司令になった気分になります。カッコイイ!スイッチが何個もあり、全自動で生コンクリートの積み込みなどの作業を行ってくれます。パソコンには、地図上のどこを走行しているのかだけではなく、荷下ろしを開始したなどの細かい情報も反映されるようになっています。

ということで、今回は「コンクリートミキサー車」をご紹介しました!普段、私達の住む街のために働いているクルマとあって、興味を持っている方も多かったと思います。今度見かけた時は、ぜひこの記事の内容を思い出してみて下さい!

関東宇部コンクリート工業株式会社

関東生コン輸送株式会社 UBE三菱セメント株式会社

自動車ライター

幼い頃からガンダムが好きで、ロボットや車に興味を持つようになる。その後、工業高等専門学校に入学し、物質工学・機械工学など専門工学を学ぶ。現在は自動車雑誌など多くの媒体で執筆。愛車はランドクルーザー76でオフロードコースを走るのが趣味。

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