Yahoo!ニュース

そこまで行く? 深堀りの日本語 VOL2  ~SDGSで小論文突破~

AZUSA日本語ジャーナリスト/講師/図書館司書/編集者

みなさん、夏休みの真っ最中ですね。仕事をしている方は、なんでこんな暑い時に……と呪詛の言葉を吐いてらっしゃるはず。あとひと月ですから、熱中症に気をつけて何とか乗り切りたいものです。

もはや国民の宿題? SDGS

さて、今回は、あらゆる中高、大学、そして様々な企業に提案が求められているSDGs「Sustainable Development Goals」――エスディージーズについて、宿題や課題文が出たときの取り組み方をご紹介します。受験にもよく登場しますし、商品開発なども、SDGSの視点を生かしたものだと通りやすくなります。

たとえば古着を再生するのも、広義のSDGS。別に国連に勤めていなくとも、身近な所から始められる
たとえば古着を再生するのも、広義のSDGS。別に国連に勤めていなくとも、身近な所から始められる

今さら聞けない SDGS

ではSDGSって? 訳せば「持続可能な開発目標」のこと。2015年9月、ニューヨークの国連本部で「国連持続可能な開発サミット」が開催された際に編み出されました。飢餓をなくすには? 格差をなくすには? 地球資源を確保・永続させるには? などなど、いくつもの小課題が設定され、世界一丸となって取り組もうということになったのです。詳細はこちらをどうぞ。SGDSジャーナル(外部リンク)

ダブルスタンダードですが……

個人的には、このSDGSはかなり突込みどころがあると思っています。だって、持続可能な社会というなら、何より必要なのがエネルギーの削減と思うのですが、コンビニはお客がいなくても夜通し開いているし、オリンピックはコロナ渦でも開催されるし、いちばん声高に訴えているアメリカは、砂漠を巨万の富をかけて改造し、豪華絢爛なカジノを運営しているし。……

熱のこもる人工芝に、木馬も暑そう
熱のこもる人工芝に、木馬も暑そう

ただ、それはそれとして、全国・全世界で公募されているSDGSに関する論文、コンテストは、課題もはっきりしていますし、落ちてモトモトと割り切れますし、どうすれば相手を説得できる文章を書けるかのいいトレーニングにもなると思います。

ガールスカウトのSDGS取組活動公募(外部リンク)
●SDGSをテーマとした作文コンクール
●誰ひとり残さない 小論文・作文コンテスト(2021年了)
一覧を紹介するサイトもできているくらい、どんな人も、どこかに応募できるようになっています。賞金はそれほど高くありませんが、公式コンテストに入賞すると、履歴書にも書けるので、学校や会社で特に課題が出ていないという人も、ぜひチャレンジしてみてください。

では、具体的に何をどう書けばいいか対策をご紹介していきます!

① 提示されている課題をよく読む 

生徒の採点をしていて気が付くのが、半分以上が問題をよく見ていないということです。カタカナで答えろ、といっているのにひらがなで答えるのとかザラ。作文の課題でも同じことがいえます。

作文コンテスト「一人ひとりの未来」
地球環境の危機が取り上げられる今、一人ひとりの未来は、国境や性別など、これまであたりまえのようにあった境界を越えて、人と人とが手をつなぎあうボーダーレスの世界に見いだされるのではないでしょうか。新しい時代の「分断なき地球」を目指して、皆さんが成し遂げたいことSDGsの観点からお書きください。(1200~2000字)

宿題の答えそのままになってはいけないので、過去のコンテストをアレンジしています。まず、この問題文を解読しましょう。

 キーワードは太字部分です。前段の文は、この問題に至るまでの前フリ。おっちょこちいさんは、始めのほうだけ読んで、「国境はなぜあるのか」みたいな作文を書いちゃいます。最後まで読む! ここにはゴールと手段が提示されています。

 500m走るにあたって、自分のしたい練習を書きましょう

と言っているのと同じです。練習、つまり成し遂げたいことを列挙するにあたり、常にゴールを意識すること。また、皆さんが成し遂げたいこと 書いてあるのにも注意。「たい」ですから、成し遂げたことではなく、希望を書けばOK。これも、「成し遂げたこと」と勘違いして書いてしまう人が結構います。これから、分断なき地球目指して、自分ができること、してみたいことを書くわけです。希望ですから、何を書いてもOK。

ワードの見出しマップを使って、要点を整理していく
ワードの見出しマップを使って、要点を整理していく

②どんな「分断」があるか考えてみる

「分断なき地球」を目指せ、と提示されていますが、じゃあ「分断」って何? 「国境や性別など」と、例が出ています。しかしこれだけじゃ足りない。他は各自考えろ、と出題者はいっています。いえ、書いてないけど、「aとbなど」と、文章にあったら、CやDは自分で考えろ、といっているのと同じなのです。

例;男女の境界 貧と富の境界 北半球と南半球の経済格差 

……などなど。思いつく「断絶」をどんどんメモしていきます。ネットも参考に。その中から、自分がいちばん気になる、あるいは書きたくなるテーマを選びます。流れとしては、どうしたら境界がなくなるか、自分の言葉で提案できるものが、いちばん選考委員の心を動かせるでしょう。

最初のアイデアメモは、ネットや図書館など外からの情報を取り入れてふくらませる
最初のアイデアメモは、ネットや図書館など外からの情報を取り入れてふくらませる

なお、メモがつらつら文章になることもあるので、パソコンで書いておいたほうが後で加工しやすくなります。

作業メモや構成メモは、私の場合、ワードの「見出しマップ」を使っていますが、ワード以外にも様々な無料アプリが出ています。「あうとら」は、個人的に使いやすくて、軽くておすすめ! 外部リンク アウトライナーアプリ「あうとら」

いきなり書き始めるのはぶっつけ本番で舞台に出るようなもの。まず資料をあつめ、メモする
いきなり書き始めるのはぶっつけ本番で舞台に出るようなもの。まず資料をあつめ、メモする

一度列挙したら、ひと晩寝かせます。翌朝みると、いちばん書きたいものがふわーっと浮かびあがってくるから不思議。

アイデアに煮詰まったら、散歩しながら古本屋めぐり
アイデアに煮詰まったら、散歩しながら古本屋めぐり

それでは次は、どうしたらアイデアやメモを文章化できるか? です。来週アップ予定ですので、それまでにアウトライナーアプリ等を使って、メモをつくっておいてください♪

日本語ジャーナリスト/講師/図書館司書/編集者

國學院大学卒。金田一春彦に師事。出版社勤務を経てフリー編集者、ライター、図書館司書に。文章講座レクチャーをきっかけに国語講師へ。国公立および私立中高で国語の授業も受け持つ。編著書に『なごみ歳時記』(永岡書店)、『校閲記者の目』(毎日新聞出版)他多数。『校閲記者の目』はプロが集まる現場、神保町の三省堂本店(現在改装中)でロングセラーとなった。 趣味は稲作文化のふるさと・中国雲南省への旅行と、仏教芸術の宝庫・敦煌シルクロードへの旅。金田一先生のあとをついで、失われつつある先住民族の辞書をつくりたいと思うこの頃。

AZUSAの最近の記事