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祝!! 大谷選手の言葉の使い方に思う

AZUSA日本語ジャーナリスト/講師/図書館司書/編集者

皆さん、こんにちは。WBⅭ、一瞬でも目が離せませんでしたね。朝はアメリカとの決勝戦を前にした、大谷選手のチームへの呼びかけがツイッターで話題になりました。#大谷 #WBⅭ決勝 #侍ジャパン

「憧れるのはやめましょう。ゴールドシュミットがいたり、トラウトがいたり、ベッツがいたりとか誰しもが聞いたことある選手がいる。でも憧れてしまったら越えられないんで。僕らは今日越えるために、トップになるために来たんで」

テレビで見ていて、まず「憧れるのをやめましょう」という言葉から始まったので、えっと思いました。「(一位になるのを)憧れるのをやめましょう」、という意図かと、一瞬誤解したのです。つまり、「何に」憧れるのか、目的格を抜いてしゃべりだしたのが、素晴らしい。一流選手は言葉の使い方がめちゃめちゃ恰好よく、しかも正確なのです。

詳しくは後で~謎を残す

続いて、何に憧れるのかを語ってくれます。アメリカの有名選手に憧れるな、ということだったのですね。ではどうするの? 次に、謎が明かされます。

●憧れたら越えられない

●越えて、トップになるために来た

なるほど~。そして、最後がまた洒落ていました。

今日だけは、憧れるのを捨てましょう

この言葉でしめくくられました。

教室では、序破急といい、結論を先に言うことのプレゼン効果を教えています。

そうすると、結論→中身→結論 の順序で話すため、結論を2回言っていることになり、効果としては半減。そもそも中身を聞いた意味がなくなりますからね。だから、同じくりかえしではなく、少しズラすこと、と伝えています。

大谷選手は、「今日だけは」と最後のくだりでつけくわえていました。

最初は言っていないんです。最後に「今日だけは憧れるのをやめましょう」ということで、冒頭とはまた違う深みを感じます。つまり、憧れるな、と言っているわけではない。

今日だけは やめよう

何か、これが泣かせますね。明日からはまた憧れていいんです。でも、今日だけは……。

今日だけは、と思うことで人間、がんばれることたくさんあると思います。

#WBC速報

日本語ジャーナリスト/講師/図書館司書/編集者

國學院大学卒。金田一春彦に師事。出版社勤務を経てフリー編集者、ライター、図書館司書に。文章講座レクチャーをきっかけに国語講師へ。国公立および私立中高で国語の授業も受け持つ。編著書に『なごみ歳時記』(永岡書店)、『校閲記者の目』(毎日新聞出版)他多数。『校閲記者の目』はプロが集まる現場、神保町の三省堂本店(現在改装中)でロングセラーとなった。 趣味は稲作文化のふるさと・中国雲南省への旅行と、仏教芸術の宝庫・敦煌シルクロードへの旅。金田一先生のあとをついで、失われつつある先住民族の辞書をつくりたいと思うこの頃。

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