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そこまで行く? 深堀りの日本語 VOL3  ~SDGSで小論文②~

AZUSA日本語ジャーナリスト/講師/図書館司書/編集者

前回のSDGsで小論文の続きです。自分にとって興味あるネタをネットや本で調べてメモするところまで、ご紹介しました。

このメモの書き方ですが、適当に書いてしまって、後で見直せなくなったりします。重要なのは、見出し。見出しを大きく書き、その下に小見出しを幾つか書き、それぞれの内容を下に小さく書いていくことですね。すると、新聞と同じで、見出しを見ただけで内容の検討がつくようになり、格段に見直しやすくなります。

メモに小見出しをつけ、タイトルをつける

見出しをつくてアイデアをメモしていく。①、②、③……と下階層に番号。見出しがないと、後で見直せなくなってしまう。
見出しをつくてアイデアをメモしていく。①、②、③……と下階層に番号。見出しがないと、後で見直せなくなってしまう。

融合課題はサブテーマを大切に

今時の記述文なのですが、「環境問題について書きなさい」といった、ワンテーマで出されることはめったになく、「環境問題について、自分の体験から思うことを書きなさい」といった、サブテーマと共に出されることが多いです。

入試も同じで、「源氏物語」のある部分について翻訳するといったワンテーマではなく、「源氏物語」について、円地文子さんとか評論家数人が話し合っているシナリオが紹介され、彼らが大切にしていることは何ですか、といった、2分野にわたる問題が出るのです。これを「融合問題」といいます。

さて、小論文の課題も同じです。「SDGsについて、自分のできることを書きなさい」といった課題が出たら、まずSDGsについてそのものを調べる。次に、「自分のできること」を探してみましょう。

その際は、SDGs一覧の図を参考に。この中から、自分に身近なテーマを探します。たとえば、こども食堂でボランティアしているなら2の「飢餓をゼロに」がリアリティをもって書けるはずですし、男女の役割分担に両親をみていて違和感を覚えるなら、5のテーマで書けるでしょう。おじいちゃんが漁師をしているなら14の「海の豊かさを守ろう」なんてのもいい。海外に行った経験があるなら、10で書けるはずです。

自分に何の関係もないものを選ぶと100字でネタギレ、あるいは書く気がしなくなります。自分のことばで書けるものを選びます。

古着のリサイクルも、まわりまわって環境保護の一役に。そのまま捨てると環境にさまざまな影響が
古着のリサイクルも、まわりまわって環境保護の一役に。そのまま捨てると環境にさまざまな影響が

構成メモをつくる

では、自分の身近なネタを拾い出したら、いよいよ構成メモをつくります。たとえば、おじいちゃんが漁師だったとして……

1 海外に行くにはパスポートが要る。しかし海は陸と違って国境がない。私はずっとそう思っていた。

 ※書く人がどんなタイプか、「私」のキャラが読む人にわかるようさりげなく自己紹介

2 海に憧れるのは祖父の影響もあるかもしれない。祖父はマグロの一本釣りの漁師だ。沖縄に住んでいる。

        ※自分の経験、生活を入れてツカミにする。

 3 夏は沖縄へ行くのが楽しみ。しかし、さいきん、おじいちゃんは元気がない。
 4 近海で魚のとりあいが起こっているという。魚の量そのものも減っている。海に国境はあった、それも厳然と。

※缶詰のほとんどが日本で消費されているなど、農水省の確かなデータを入れる。ネットにデータあり。

5 魚の資源を保持するためには、魚を食べなければいいのか? しかし、そうなると、日本の文化は、祖父のような仕事をしている人は、どうなるのだろう。

        ※問題提起をする。

6  祖父は、「魚を食べなくなったら日本人じゃない」といい、資源枯渇を心配する。自分にできることは何だろう。

       ※問題解決への道を探っている姿をみせる。

7 そんなことを考えながら東京に戻ってくると、やけに安いスーパーの魚売り場に気づく。

   ※このレポートを通じて周囲をよく見るようになったなど、成長している姿をみせる。

8  漁が地場産業である沖縄より安い! なぜ東京で? 自力調査

※ネットでちょこちょこ調べているだけじゃなく、足を使って汗をかいて調べている様子を見せる。

9 実は密漁が行われているらしい。密漁魚は安くスーパーに卸される。

自分が今まで食べていたものは密漁魚だったのか? そこに母が「今日のブリは安かったのよ~」と帰ってくる。それは密漁魚かもしれない……。

10 ネットで調べて、確実に密漁魚でないものを売っているスーパーに気づく。(イオンがやってますね)参考 イオン、国産ウナギの完全トレースを実現(外部リンク)

     そっと行ってみる。母が買ってくる魚より、1~2割は高い。

11 自分のおこづかいを減らしてでも、密漁魚を買わないよう、家族にお願いしてみる。それがまわりまわって乱獲を減らし、祖父のような仕事をする人を助ける。魚も美味しい。(密漁魚かと疑りながら食べる魚はまずい!)

12 ささやかだが、それが今の私のできることだ。貧しい国は密漁して稼ぎ、豊かな国はそれを買いたたいて食べる……そんな「漁のボーダー」を海洋国の一員として、少しでも減らしていきたい。

メモにしたがって文章化する

このウナギが食べられるのはいつまでか~
このウナギが食べられるのはいつまでか~

こんな感じで、気づき→問題提起→解決の流れで構成する。1201字以上2000字以上という規定なので、10項目もつくれば、それぞれ100字から200字くらい、あっという間に埋まるでしょう。多少多めに書いて、「胃痛が痛い」みたいな重複文を細かくチェックして削っていくと、全体が引き締まります。

最後にタイトルを決める。タイトルがださいと、第一印象が悪くなります。

「新しい時代のSDGs」とか、先方が提起した主題をそのままタイトルにするのはやめたほうが無難。何か自分らしいタイトルをつけましょう!

読書感想文のコンテスト等も同じで、「赤毛のアンを読んで」みたいなタイトルは、タイトルで激落ち。「私の腹心の友」みたいな、自分らしいタイトルをつけて、作品の顔にします。

夏休みも後半戦ですが、しっかり準備すれば、ぶっつけ本番で書きだすより、はるかに能率よく書けます。ぜひ、チャレンジしてみてくださいね。

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日本語ジャーナリスト/講師/図書館司書/編集者

國學院大学卒。金田一春彦に師事。出版社勤務を経てフリー編集者、ライター、図書館司書に。文章講座レクチャーをきっかけに国語講師へ。国公立および私立中高で国語の授業も受け持つ。編著書に『なごみ歳時記』(永岡書店)、『校閲記者の目』(毎日新聞出版)他多数。『校閲記者の目』はプロが集まる現場、神保町の三省堂本店(現在改装中)でロングセラーとなった。 趣味は稲作文化のふるさと・中国雲南省への旅行と、仏教芸術の宝庫・敦煌シルクロードへの旅。金田一先生のあとをついで、失われつつある先住民族の辞書をつくりたいと思うこの頃。

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