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【ウルトラマン史上初のキスシーン?】アメリカ人作家が描いた幻のウルトラマンとは?

二重作昌満博士(文学)/PhD(literature)

皆様、こんにちは!

文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)です。

少しずつ春の足音が聞こえてくる今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか?

寒かった2月ももうすぐ終わりに差し掛かり、3月には春休み。

さらに桜が咲いて少し経てばゴールデンウィークと、春の行楽シーズンが近づきつつあります。各国の旅行規制が緩和され、「今年こそ海外へ行くわ!」という方々もいらっしゃるのではないでしょうか?

今回のお話の舞台は、広大なアメリカ。

米国・イエローストーン国立公園(2014年 筆者撮影)
米国・イエローストーン国立公園(2014年 筆者撮影)

このアメリカで活躍したウルトラマン達の紹介と、残念ながら実現には至らなかった、

アメリカ人作家が描いた「幻のウルトラマン」について解説します。

※本記事は、「私、ウルトラマンを観たことがない」という方にもお楽しみ頂けますよう、概要的にお話しますので、お好きなものを片手に、ゆっくりご覧頂けますと幸いです。

ウルトラマンシリーズ史上初のキスシーン?!アメリカ生まれの3人のウルトラマンとは?

突然ですが、皆様はウルトラマンシリーズをご覧になったことはありますか?

ウルトラマンシリーズは、円谷プロダクション制作の特撮ヒーロー番組です。シリーズ第1作『ウルトラマン』が放送されたのは1966年のこと。空から、海から、地底から現れる怪獣や宇宙人達から地球の平和を守るため、M78星雲「光の国」からやってきた不死身の宇宙人であるウルトラマンが、地球人達と力を合わせて怪獣達と戦う物語。

昭和ウルトラマンシリーズ(筆者撮影)
昭和ウルトラマンシリーズ(筆者撮影)

『ウルトラマン(1966)』の放送開始以降、本作はたちまち人気番組となり、その次回作である『ウルトラセブン(1967)』や『帰ってきたウルトラマン(1971)』等、派生シリーズが次々に制作されるようになりました。その後も『ウルトラマンティガ(1996)』をはじめとする平成シリーズ、そして最新作『ウルトラマンデッカー(2022)』まで、55年以上に渡ってウルトラマンシリーズは国内で制作されました。近年では、映画『シン・ウルトラマン(2022)』のヒットも記憶に新しいかと存じます。

平成ウルトラマンシリーズ(筆者撮影)
平成ウルトラマンシリーズ(筆者撮影)

しかし長いウルトラマンシリーズの歴史の中で、一部の作品は日本ではなく、アメリカやオーストラリア等の海外で制作されていた時期がありました。

アメリカ初の米国産ウルトラマンが登場したのは1987年。『ULTRAMAN THE ADVENTURE BEGINS(日本語タイトル:ウルトラマンUSA)』と題した長編アニメーション映画として、全米各テレビ局で放送されました。

ウルトラマンUSA(左よりベス、スコット、チャック 筆者撮影)
ウルトラマンUSA(左よりベス、スコット、チャック 筆者撮影)

『ウルトラマンUSA』の物語は、M78星雲の惑星ソーキンからやって来た怪獣達(ソーキン・モンスター)がアメリカ各地に出現し、それを追ってやって来た3人のウルトラマンがアメリカ空軍の隊員達と一心同体となって、怪獣達から地球を守るというお話。

本作の特徴は、女性を含めた3人のウルトラマンが1つのチームとなって地球を守る描写はもちろん、ウルトラマンシリーズ初のキスシーン(主人公のスコット【ウルトラマンスコット】とスーザン)が導入されたのも特徴でした。

本作は、アメリカのアニメ制作会社ハンナ・バーベラ・プロダクション(『トムとジェリー』の会社です)と円谷プロダクション(ウルトラマンの制作会社)の提携で制作されました。視聴率は好評だったようで、同時期の子ども向け映画としては第3位の高視聴率を記録しました。

アメリカ初のウルトラマンは幻のヒーローだった?!アメリカ人作家が描いた「変装」するウルトラマンとは?

実はこの『ウルトラマンUSA』が企画される以前にも、アメリカでウルトラマンシリーズを制作しようとする企画があったのをご存知でしょうか?

それが、『ウルトラマンU・S・A ULTRAMAN HERO FROM THE STARS』(1981年7月7日 第一稿)でした。

実は本作こそ、シリーズ初のアメリカ人作家(ダン・グレート氏)によって描かれたウルトラマンシリーズであり、日米合作映画となるはずの作品でした。

本作の物語は、ウルトラマン達の故郷「M78星雲・光の国」の中にあるウルトラ宮殿にて、(地球人換算で)二十代半ばの青年ボルカンが、ウルトラの父よりウルトラマンに変身するためのユニフォームと武器(短剣)を与えられ、地球を守る任を与えられるというもの。

つまり、スーパーマンやバットマンのように、奇抜なコスチュームを身に纏って「変装」するウルトラマンという形で描写される予定だったのです。私達日本人の感覚では、ウルトラマンは人間が「変身」するものという認識が強いですが、アメリカでは当初、人間が変装する認識だったようです。

ボルカンは人間の姿(ロジャー)で地球に留まるも、いざ怪獣が出現したらユニフォームを身に纏って巨大化し(地球人からは「あの仮面の男」とマスク呼ばわり)、片手をヘルメットに内蔵されたイヤホーンにつけて連絡をとるなど、ウルトラマンのあの容姿はユニフォームやヘルメットだと描写している点が特徴でした。

結局この企画は実現に至らず、『ウルトラマンUSA』となるわけですが、本作の製作にあたり、再び日本とアメリカの間で文化的背景の違いが起こることに・・・。というのも、アメリカサイドがデザインしたウルトラマンのデザインは、スパイダーマンやスーパーマンを彷彿させるものだったようです(マント無しでヒーローは空を飛ばない点など、アメリカ人のヒーローに対する認識は、日本人と異なっていました。近年のアメコミヒーローでは、『アベンジャーズ』シリーズに登場したヴィジョンや、DCヒーローのシャザムもマントを着用して空を飛んでいますね♪)。

キャプテンアメリカと筆者(カリフォルニアディズニーランドにて)
キャプテンアメリカと筆者(カリフォルニアディズニーランドにて)

カリフォルニア ディズニーランド・リゾート(Disney land Resort)
・住所:1313 Disneyland Dr, Anaheim, CA 92802
・公式サイト:https://disneyparks.disney.go.com/jp/disneyland/(外部リンク)

そこで、日本側のデザイナーが再度手を加え、アメリカに送る作業が何度も行なわれたのだとか。こうした点からも、ウルトラマンに対する日本人とアメリカ人のヒーロー観の違いが現れていたのです。

その後、今度は実写作品という形で、ハリウッドでウルトラマンが制作されることとなり、ケイン・コスギさん主演でビデオ作品『ULTRAMAN(日本語タイトル:ウルトラマンパワード)』が1993年に発表されました。本作は全13話で、ウルトラマンパワードが主人公のケンイチ・カイ(演:ケイン・コスギ氏)と一体化し、バルタン星人やレッドキング、ゼットン等の人気怪獣から地球の平和を守るため、アメリカを舞台に戦う内容でした。

ウルトラマンパワード(筆者撮影)
ウルトラマンパワード(筆者撮影)

本作は強い太陽光とほぼ晴れという天候に加え、湿度も高めのハリウッドという土地で制作されているため、なんと撮影で使用されたウルトラマンのスーツ(着ぐるみ)はなんと冷房装置付きで、13話分13体がつくられるという状況だったのだとか。

(私もコロナ前まで日本とアメリカをよく往来していたため、ハリウッドのあるロサンゼルス市にも何度か訪れているのですが、外出時はサングラスとペットボトルは必須である上、日の昇らない早朝と昼間の気温差に苦戦した記憶があります。それだけ現地の陽光の存在感は圧倒的なのです(泣)。写真のとおり、早朝はまだ少し寒くてダウン着てます。)

筆者(2017年 グランド・キャニオン国立公園にて)
筆者(2017年 グランド・キャニオン国立公園にて)

『ウルトラマンパワード』終了後、アメリカでのウルトラマンシリーズの製作は約30年近くに渡り途絶えることとなります。しかし、近年Netflixと円谷プロの共同製作のCGアニメ長編映画『Ultraman(原題)』(監督:シャノン・ティンドル氏)が発表される等、世界各国のクリエイター達によって、世界市場へ向けた新たなウルトラマンシリーズの発信が本格的に開始されようとしています。続報が楽しみですね♪

いかがでしたか?

同じウルトラマンシリーズでも、製作する国における文化的な背景や土地柄などが、作品の製作において色濃く反映されていたことが伝わりましたら大変嬉しく思います。

『ウルトラマンUSA』も『ウルトラマンパワード』も素敵な作品ですので、宜しければ是非観てみてくださいね♪

最後まで本記事を読んでくださり、誠にありがとうございました。

☆ウルトラマンUSAを視聴するならこちら!
・TSUBURAYA IMAGINATION:https://imagination.m-78.jp/(外部リンク)

(参考文献)
・青柳宇井郎・赤星政尚、【懐かしのヒーロー】ウルトラマン 99の謎、株式会社二見書房
・澤村信、エンターテインメントアーカイブ ウルトラマンG ウルトラマンパワード、株式会社ネコ・パブリッシング

この記事を読んで頂き、「海外での日本特撮やアニメ作品の展開に興味を持った」という皆様、私の過去の記事やTwitterにて、海外現地での様子や商品展開についてもお話をさせて頂いております。宜しければ、ご覧ください。

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博士(文学)/PhD(literature)

博士(文学)。日本の「特撮(特殊撮影)」作品を誘致資源とした観光「特撮ツーリズム」を提唱し、これまで包括的な研究を実施。国内の各学術学会や、海外を拠点とした国際会議へも精力的に参加。200を超える国内外の特撮・アニメ催事に参加してきた経験を生かし、国内学術会議や国際会議にて日本の特撮・アニメ作品を通じた観光研究を多数発表、数多くの賞を受賞する。国際会議の事務局メンバーのほか、講演、執筆、観光ツアーの企画等、多岐に渡り活動中。東海大学総合社会科学研究所・特任助教。

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