Yahoo!ニュース

豚骨ラーメンの聖地・福岡で年末年始に絶対食べたいラーメン5選

上村敏行ラーメンライター

皆さん、濃い豚骨ラーメン啜ってますか? 福岡を拠点に活動しているラーメンライターの上村です。私、好きが高じて2002年からラーメンの記事を雑誌などのメディアで書き始め、これまで20年に渡り3,000店近くのラーメン店を取材してきました。特に昨今、皆さんも同じように「ラーメンには人を笑顔にするパワーがある」、何より「自分はやっぱりラーメンが好きだ」ということを改めて実感したのではないでしょうか。これからこのコーナーで全国のラーメンの魅力を紹介していくにあたり第一回目はやはり我が町福岡の誇り豚骨ラーメンから。年末年始にぴったりの「福岡22年〆ラー&23年初ラーのススメ」を紹介します。

ラーメンライター上村敏行。20年に渡り年間500杯を食し、さまざまなメディアで執筆。ラーメンライターとしての活躍はイギリス・ガーディアン紙、ドイツのテレビ・ZDFでも紹介された。
ラーメンライター上村敏行。20年に渡り年間500杯を食し、さまざまなメディアで執筆。ラーメンライターとしての活躍はイギリス・ガーディアン紙、ドイツのテレビ・ZDFでも紹介された。

年末年始の休み、営業時間、限定イベントも紹介。うますぎる福岡豚骨5選

冬休み、年末年始に福岡へ旅行を計画されている方、また久しぶりに帰福される方も、やはりバリッと濃厚な豚骨ラーメンが食べたいですよね。

言わずと知れた豚骨ラーメンの聖地・福岡の中で“バリうま!”であることを大前提に、「ベタすぎない超名店」「天神中心で使い勝手◎」「初詣スポットの近く」「年末年始の心温まるサービスのある店」などを豚骨戦士・ラーメンライターの上村がチョイスしました。福岡への観光客、帰省の方、そして地元民もぜひチェックしてください。

間違いなし!の博多ラーメンを食べて新年も好発進といきましょう。

【年末年始に絶対食べたい福岡豚骨ラーメン5選】
(1)天神中心の“特濃”豚骨ラーメン店「博多ラーメン 二代目けんのすけ 本店」
(2)超ノスタルジック博多ラーメン店。大晦日恒例「運そば」とは?「一九ラーメン 老司店」
(3)博多シャバ系の名店。大晦日は「ふるまいラーメン」も開催「駒や 馬出本店」
(4)太宰府天満宮の近くの正統派博多ラーメン店
「一十(いっとう)」
(5)“そそりすぎる!”国道3号系のレジェンド
「丸星ラーメン」

(1)天神中心の“特濃”豚骨ラーメン店

「博多ラーメン 二代目けんのすけ 本店」

「博多ラーメン 二代目けんのすけ 本店」の、ど迫力「のり玉チャーシューメン」(1,050円)
「博多ラーメン 二代目けんのすけ 本店」の、ど迫力「のり玉チャーシューメン」(1,050円)

「福岡の中心地・天神で“超絶に濃い”豚骨ラーメンが食べられる」。それが「二代目けんのすけ」の魅力。厨房には直径60cmの巨大な“魅せる羽釜”が2基据えてあり、“呼び戻し”をかける工程をカウンター越しに見ることができます。

「博多ラーメン 二代目けんのすけ 本店」の店主・北村和也さん。2つの羽釜のスープを随時ブレンドしながら最高のスープに仕上げる
「博多ラーメン 二代目けんのすけ 本店」の店主・北村和也さん。2つの羽釜のスープを随時ブレンドしながら最高のスープに仕上げる

“呼び戻し”とは、「久留米大砲ラーメン」に端をなす古の豚骨ラーメンの製法のこと。一般的に「呼び戻し=釜を空にすることなく継ぎ足し煮込む」と認知されていますが、正確には「煮込み時間、豚骨濃度の異なる複数の釜のスープを、刻一刻と変化するそれぞれの状態を見極めながら絶妙にブレンドする」やり方を指します。決まったレシピがないため、ラーメン職人の経験、感覚的なものが肝要なんですね。燃料を大量に使い、豚骨のにおいの問題などもあるので、天神の中心で呼び戻しを実践しているところは珍しいんです。

とろりとした茶濁スープは福岡でも屈指の濃厚さ
とろりとした茶濁スープは福岡でも屈指の濃厚さ

「二代目 けんのすけ」の一杯は、豚のゲンコツ、背骨、そして、ねっとりとした粘度と甘さが出る「腹脂」をガッツリと炊いたスープにしなやかなコシのある自家製細ストレート麺を合わせています。写真の茶濁スープからも、その重厚感が分かるでしょう。特濃で豚骨フレーバーも立っているので、正直好みが分かれるかもしれませんが、“本物の呼び戻しスープを体感したい方”、“〆ラー、初ラーにバリっと濃い豚骨を注入したい方”には、ココがおすすめ。何てったって天神中心ですからアクセス至便です。

濃厚豚骨派に支持を集める「博多ラーメン 二代目けんのすけ 本店」
濃厚豚骨派に支持を集める「博多ラーメン 二代目けんのすけ 本店」

【博多ラーメン 二代目けんのすけ 本店】
住所:福岡市中央区天神1-13-13
電話:092-713-7113
時間:11:00〜15:00、17:00〜23:00
休み:不定、12/31(土)、2023年1/1(祝)
席数:25席
駐車場:なし

(2)超ノスタルジック博多ラーメン店。

大晦日恒例「運そば」とは?

「一九ラーメン 老司店」

「博多一風堂」「一蘭」「博多一幸舎」「博多一双」「石田一龍」などなど。福岡の繁盛店には屋号に“一”(いち)の付く店が多いという法則がラーメン好きの間で、まことしやかにささやかれています。確かにそう! 中でも「古(いにしえ)の“一”の超名店」と言うべき老舗が「一九ラーメン」。

「一九ラーメン 老司店」の「ラーメン」(500円)
「一九ラーメン 老司店」の「ラーメン」(500円)

僕も足繁く通っている「一九ラーメン 老司店」は、1965(昭和40)年創業と齢半世紀以上。福岡出身者へ「ソウルフード的なラーメンは?」と聞くとかなりの確率で挙がる店です。

麺場が目の前のカウンターが特等席
麺場が目の前のカウンターが特等席

奥のスープ室で、ガスではなく今なお灯油を燃料に五右衛門釜で煮出す製法や、シブすぎるL字カウンターなどプッシュポイントはたくさんあるのですが、ここでは「大晦日限定の心温まるサービス」を紹介したいと思います。

この芳醇な豚骨スープがバリうま! あー、お腹空いてきた
この芳醇な豚骨スープがバリうま! あー、お腹空いてきた

福岡市民にもあまり知られるところではありませんが実は「一九ラーメン 老司店」には、「運そば」という大晦日のみの恒例行事があります。決して大それたものではありません。大晦日だけラーメンの上にデフォルトで蕎麦が添えられているんです。つまり、ラーメンを頼むと勝手に蕎麦が上に追加されて出てきます。先代の時代から続く“大将のさりげない感謝の気持ち”。

それが、こちら!!

大晦日した食べられない「運そば」。僕は昨年体感してきました
大晦日した食べられない「運そば」。僕は昨年体感してきました

常連には、この運そばを食べないと年を越せん、と楽しみにしている方も多いですし、この日だけ蕎麦がデフォで混じっているにつき、知らずに頼んで「え!?」となり、一瞬後にほっこり笑顔になる人も。サービスを知りつつ、当然蕎麦が苦手な常連もいらっしゃって「ワンタンメンカタ、蕎麦抜きで!」と、耳慣れないオーダーが聞こえてくるのも大晦日ならではでおもしろい!

タイミングが合えばぜひ大晦日の16時までに店を訪れてみてください。

「一九ラーメン 老司店」。帰福したら必ず食べるという友人も多い
「一九ラーメン 老司店」。帰福したら必ず食べるという友人も多い

【一九ラーメン 老司店】
住所:福岡市南区老司1-33-13
電話:092-565-0193
時間:11:00〜20:00、12/31(土)は〜16:00(大晦日限定“運そば”を提供)
休み:不定、2023年1/1(祝)〜3(火)
席数:30席
駐車場:20台

(3)博多シャバ系の名店。

大晦日は「ふるまいラーメン」も開催

「駒や 馬出本店」

博多ラーメン「大晦日の心温まるサービス」をもうひとつ。「駒や 馬出本店」で行われる「ふるまいラーメン」を紹介します。同店は、店主の倉田承司さんが幼少から親しんできた“昭和の豚骨”を自分なりの解釈で復刻。クサウマ!な「博多シャバ系豚骨」でブレイクした店です。

「駒や」のラーメンはシャバくてクサウマなのが最高!である
「駒や」のラーメンはシャバくてクサウマなのが最高!である

倉田さんは「育ってきた地元への恩返し」の気持ちも込め、昨年から大晦日に店のそばにあるグラウンドでラーメン連合「令和維新会」の仲間と共に「ふるまいラーメン」を実施。

昨年、行われた「ふるまいラーメン」の様子
昨年、行われた「ふるまいラーメン」の様子

今年は大晦日、昼の12:00から開催される
今年は大晦日、昼の12:00から開催される

僕も前回参加しましたが、本当にいいイベントでしたね。オープンエアの中、子供たちが満面の笑みでラーメンをズズズ。寒空の下、親子で寄り添いラーメンを啜る。博多ラーメンの原風景を見ているようでした。

子供は無料で楽しめる
子供は無料で楽しめる

2022年12/31(土)の大晦日、今回は昼の12:00から開催(先着200杯)。18歳未満は無料、それ以上の大人は1杯500円でラーメンが楽しめ、売上はすべて児童福祉施設に寄付されます。今年の福岡〆ラーメンにピッタリのイベントですね。

【駒や 馬出本店】
住所:福岡市東区馬出2-5-7
電話:092-292-9480
時間:11:00〜20:00、12/31(土)は12:00から“ふるまいラーメン”(18歳未満無料、以上は1杯500円)を開催。会場は店舗すぐ近くのグラウンド。先着200杯売り切れ次第終了
休み:月曜、2023年1/1(祝)〜3(火)
席数:7席
駐車場:なし

(4)太宰府天満宮の近くの正統派博多ラーメン店

「一十(いっとう)」

太宰府天満宮から車で7分ほどの場所にある、博多ラーメンの穴場的名店です。

五右衛門釜で煮出す「一十」の「ラーメン」(650円)。ビジュアルも味わいも王道をゆくTHE博多豚骨
五右衛門釜で煮出す「一十」の「ラーメン」(650円)。ビジュアルも味わいも王道をゆくTHE博多豚骨

厨房の奥には、いにしえ感あふれる重厚な五右衛門釜がドスン。あまりに巨大なため、1997(平成9)年に店を建てる際。まずは五右衛門釜を基礎に据え、それを中心に建物の棟を組み厨房をレイアウトしていったそうです。

強力な灯油バーナーで炊き上げる「一十」の五右衛門釜。この手の重厚な釜を使う店は数える程しか残っていない
強力な灯油バーナーで炊き上げる「一十」の五右衛門釜。この手の重厚な釜を使う店は数える程しか残っていない

豚の頭、ゲンコツ、背骨をこの五右衛門釜で猛々しく炊いた後、カウンターの前にある羽釜のスープにブレンド。“フレッシュ”と“熟成”がうまく溶け合ったスープは、豚骨の髄からのうまみも凝縮され、程よい甘味もいいですね。脂をほとんど使っていないため、ギトギト感がなく飲みやすいスープです。

厨房には営業用の釜、麺上げ釜と2つの羽釜がはめ込まれている
厨房には営業用の釜、麺上げ釜と2つの羽釜がはめ込まれている

麺は大釜で泳がせ、真っ平らな“平網”で湯切りする伝統のスタイル。鍋の縁に網を打ち付けて湯切りする「カン、カン!」というリズミカルな音も往年の豚骨ファンの楽しみのひとつ。昔は網を打ち付けるこの音の大きさが、大将の機嫌を表すバロメーターでもありました。豚骨ラーメン店の愛すべき音風景ですね。

太宰府エリアの名店「一十」。太宰府天満宮、九州国立博物館の帰りに啜ってほしい
太宰府エリアの名店「一十」。太宰府天満宮、九州国立博物館の帰りに啜ってほしい

【博多ラーメン屋 一十(いっとう)】
住所:福岡県太宰府市朱雀6-5-17
電話:092-929-0015
時間:11:00〜14:30、17:00〜21:30、日曜祝日、月曜〜20:00※売り切れ次第終了
休み:火曜、2023年1/1(祝)〜3(火)
席数:21席
駐車場:5台

(5)“そそりすぎる!”国道3号系のレジェンド「丸星ラーメン」

久留米方面へのドライブがてら食べたいラーメンといえば、やっぱり国道3号系「丸星」。1958(昭和33)年に、24時間営業の大型ラーメンセンター(現在は21:00まで)として開業し、1日数千杯を売っていたレジェンドです。

「丸星」も最近、値上げをした。それでも1杯500円。安すぎる!うますぎるぞ!!
「丸星」も最近、値上げをした。それでも1杯500円。安すぎる!うますぎるぞ!!

創業当時はみやげで販売していたスイカが店頭を埋め尽くしトラック運転手のための無料宿泊所も備えていました。

創業当時の「丸星」。山積みにされたスイカの前にいるのが初代・星野吾三郎氏である。まだラーメンという言葉がなかったため看板には中華そばの文字
創業当時の「丸星」。山積みにされたスイカの前にいるのが初代・星野吾三郎氏である。まだラーメンという言葉がなかったため看板には中華そばの文字

さらに、店内には謎の警察犬の写真、ラーメン人生という曲で歌手デビューした長女のポスターが飾られていたと言えば、懐かしむファンも多いでしょう。現在も店の一角には無料のタクアン、高菜、惣菜の大皿が並んでいるなど、心地よいゴチャゴチャ感が残っています。

丸星のラーメンは昭和30年代の1杯60円から始まり現在も500円と激安。久留米は全国的にみてもラーメンの値段が安いエリアですが、それには丸星のコスパが大いに関係しています。

「丸星」も古の豚骨ラーメン店の象徴的道具「平網」で湯切りをする
「丸星」も古の豚骨ラーメン店の象徴的道具「平網」で湯切りをする

ちなみにもう一つ豆知識として、福岡市内の「元祖長浜屋」を「ガンソ」と呼ぶのと同じように皆愛着を込めて「マルボシ」と呼んでいますが、創業者が星野吾三郎さんなので正確には「マルホシ」(ま、どっちでも良いけど)。豚骨がガツンと効いた昔ながらの野趣あふれるラーメン。そして12歳から店を手伝い、ほぼ毎日店に出ている現在76歳の和子お母さんはじめお父さん、息子の大和さんなどスタッフのホスピタリティにも癒される超名店です。

豚骨ラーメン史を語る上で外せない重鎮「丸星」
豚骨ラーメン史を語る上で外せない重鎮「丸星」

年末年始は23年1/1(祝)のみ休み。1/4(水)には来店者に、丸ぼうろが配られます。昭和の時代は店の前で餅をつき小銭を埋め込んで配っていたそうで、今は丸ぼうろへと変わっています。かつて、ドライバーのため無料の宿泊所を作ったり、無料の惣菜を充実させたりと、創業者の星野吾三郎さんはとことんサービス精神に満ちた人でした。

豚骨ラーメンヒストリーに思いを馳せ、啜ってください。

国道3号線にある。写真の「丸星」、そして「丸幸」が国道3号系ラーメンの2大巨塔
国道3号線にある。写真の「丸星」、そして「丸幸」が国道3号系ラーメンの2大巨塔

【丸星ラーメン】
住所:福岡県久留米市高野2-7-27
電話:0942-33-6440
時間:9:00〜21:00、土・日曜・祝日は8:00〜、12/31(金)9:00〜15:00
休み:第2・4木曜、2023年1/1(祝)
席数:80席
駐車場:100台

ではでは、2023年も素敵なラーメンライフを!

九州の豚骨ラーメンこそ最強!

Kyushu's tonkotsu ramen is bar none!

九州的猪骨拉面才是拉面当中最棒的佼佼者!

2023年もラーメンを啜りまくりましょう!
2023年もラーメンを啜りまくりましょう!

ラーメンライター

1976年鹿児島市生まれ。2002年、福岡でライター業を開始。同年九州ウォーカーでの連載「バリうまっ!九州ラーメン最強列伝」を機にラーメンライターとして活躍。各媒体で数々のラーメンページを担当し、これまで1万杯以上完食。取材したラーメン店は3000軒を超える。ラーメン界の店主たちとも親交が深く、ラーメンウォーカー九州百麺人、久留米とんこつラーメン発祥80周年祭広報、福岡ラーメンショー広報、ソフトバンクホークスラーメン祭はじめ食イベント監修、NEXCO西日本グルメコンテストなど審査員も務めてきた。ラーメンライターとしての活躍はイギリス・ガーディアン紙、ドイツのテレビZDFでも紹介

上村敏行の最近の記事