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渡航50回記念オーロラ写真展開催中~強烈な感動の裏側【神戸市中央区】

小坂裕子フリーランスMC/ライター/ワーママ(神戸市)

現在68歳にして現役のネイチャーフォトグラファー、金本孔俊(かねもとよしとし)さんが、今年10月、50回目のアラスカ渡航、オーロラ撮影を終えて帰国。家族で経営する春日野道の写真館「スタジオゴールド」にて、今月5日から作品展を開催しています。普段はスタジオとして使われているPOPな壁紙の館内には、沢山のオーロラやアラスカ・カナダの壮大な自然を見つめた写真作品の数々が飾られていました。この地の虜となった金本さんの撮影エピソードやこれまでの経緯も沢山聞かせていただきましたのでご紹介します。

階段に飾られた作品たち
階段に飾られた作品たち

撮影用背景の壁に掛けられた金本さんの作品
撮影用背景の壁に掛けられた金本さんの作品

金本孔俊 写真展 渡航五十回記念 アラスカ 奇跡の光景

まだ見ぬ感動の風景を求めて

2020年、撮影に出かけていた金本さんは、新型コロナウイルスの影響等で帰国を余儀なくされました。その後も渡航を控えていましたが「ぜひ50回記念を達成して欲しい」と支援が寄せられ、今年8月、2年半ぶりにアラスカへの渡航が実現しました。

ところが、曇や雨ばかりの日が続き、納得の瞬間を撮れず撮影の延長。オーロラ予報で唯一晴れ間のありそうだったアラスカの北の方へと車を走らせました。すると、感動的な風景が、夜明け前に現れ始めました。オーロラとわずかに残った夕景のコラボレーションで、夜が明けてしまうと見ることのできない景色でした。いつもは上手く撮れない場所だったそうですが、その2日間だけは、最高の光、本物の美しさに出会うことができました。オーロラ撮影は、数百キロを車で移動したり、エンジンをかけた車で何時間も待機したりと、孤独と体力との戦いです。

写真展の会場で上映していた映像は、オーロラを定点撮影したものを繋げて作ったものだそうです。まるで動画のようでしたが、ビデオ撮影では出せない色で、編集にも大変時間がかかるのだとか。写真展を訪れていたお客様10名ほどを前にそんな風に語る金本さんは、オーロラ撮影を始めたきっかけから話してくださいました。

アラスカでの撮影の話をする金本さん
アラスカでの撮影の話をする金本さん

初海外に選んだ地・アラスカ

初めての海外旅行といえば、韓国などのアジア地域や、リゾート地のハワイなどという人も多いのではないでしょうか。アラスカは、金本さんにとって初めての海外渡航でした。33歳で写真家として独立したのち、1994年、39歳の時に「死ぬまでに一度はオーロラを見てみたい」と個人旅行を予約してアラスカに向かいました。当時は軽い気持ちだったそうですが、飛行機を降りた瞬間、目にした風景に心を奪われ、金本さんのアラスカ通いは始まりました。レンタカーを借りて移動中、軍事基地に迷い込んでしまうというハプニングもあったそうです。

初めてのアラスカでは、天候などオーロラ撮影のコンディションとしてはあまり良くなく、それよりも大自然の風景に感動したと仰っていました。2回目の渡航では、天候もよく素晴らしいオーロラとの出会いで衝撃を受け、写真集出版の話が出たこともあって、この年は全部で4回、アラスカを訪れました。

金本さんの魅せられたアラスカの大自然
金本さんの魅せられたアラスカの大自然

支援者との出会い

年に何度も、それを20年以上も継続して撮影旅行に出かけることは並大抵ではありません。金本さんも「もうアラスカへ行くのは無理かも」と思ったことがあるそうです。そんな時、ある一人の年配男性との出会いがありました。四国、今治の会社社長で、写真集をまとめ買いしてくれたかと思えば「アラスカに連れて行って欲しい」と言うのです。氷点下40度の世界は、ブリザードの凍てつく風に数分さらされるだけで凍傷を起こしてしまう死と隣り合わせの環境。大自然と向き合い、出るかわからないオーロラを一人じっと車の中で待ち続ける撮影。緊張感と集中力、さらに体力が必要です。他人を、しかもご年配者を連れての撮影は考えられず、一度はその申し出を断ったそうです。しかし、自身も「死ぬまでに見てみたい」と思った初心を思い出し、1週間だけ案内をする代わりに、その後は帰国してもらいオーロラ撮影には同行しないことを条件に、一緒に旅することを受け入れました。

それからというもの、その社長男性がスポンサーとなって、社長の知人数名も含め、年に1~2回、10年以上のアラスカ渡航を繰り返しました。金本さんの写真にもう一つの夢を託し、80歳を超えてもなお旅を続けていたパワフルな社長でしたが、87歳でこの世を去りました。

50回のアラスカ渡航で撮影された数々の展示写真
50回のアラスカ渡航で撮影された数々の展示写真

もう一つの居場所・オーロラハウス

2014年、金本さんのご子息が写真館を継いだことで、秋から冬にかけて3カ月、日本を留守にして撮影に出かけるようになりました。現地に設けられた観測所「オーロラハウス」には、夜22時頃に市街を出たツアー客が、30~40分くらいかけてやってきます。金本さんはそこでお菓子と温かい飲み物を用意して迎え入れ、オーロラ撮影のコツをお話したり、写真館で磨いた人物撮影の腕を活かしてオーロラを背景にした記念撮影をしたり、ポストカードの販売をしたりすることが、滞在中の日常となっています。年配の方が、ポーズをつけて喜んでいる姿を目にすることも多いとか。施設オーナーや旅行会社など、様々な繋がりのおかげで、撮影のための拠点を持つことができました。現在はレンタカーではなく、オーロラハウスに待機させた自分の車を使って撮影に出かけるそうです。

作品・アルバム・ポストカード・DVD・カレンダーなどの販売
作品・アルバム・ポストカード・DVD・カレンダーなどの販売

気持ちは19歳のまま

様々な色を夜空に見せるオーロラの写真を見て、最近、真珠を日常的に扱うようになった私は、あこや真珠の干渉色を連想してしまいました。その美しさを紐解いてみたいと見つめると、幸せのような、逆に不安のような、不思議な感覚に陥るのはオーロラも同じでした。同時に、本物を見てみたい、その場の空気を感じてみたいという気持ちにさせられます。

自然のつくりだす奇跡の光景は、突然現れ、その姿はその時々によって全く違うもの。瞬きひとつで変化することも。何度行ってもこれで満足、終わりということはないのかもしれません。

金本さんは「撮影から街へ戻ると、腰など身体のあちこちが痛い」と苦笑いされていました。それでも気持ちは19歳のまま「新たな風景をもっと見たい」「作品を多くの人に見てもらいたい」と仰っていたので、まだまだオーロラハンターの旅は続きそうです。展示は12月25日まで。極寒の中にある自然の神秘の瞬間を見に来てみませんか。

阪急春日野道から30秒 写真展会場:フォトスタジオゴールド神戸
阪急春日野道から30秒 写真展会場:フォトスタジオゴールド神戸

イベント情報

金本孔俊 写真展
渡航五十回記念 アラスカ 奇跡の光景

2022年12月7日(水)~25日(日)
12:00~18:00(入場無料)

会場:フォトスタジオゴールド神戸
住所:神戸市中央区筒井町3-18-13
電話:078-251-0006

アクセス:
阪急春日野道駅から南東へ30秒
阪神春日野道駅から北へ5分
JR灘駅から15分

※展示作品は、ご希望のサイズにて販売しております

金本孔俊 外部関連リンク

フリーランスMC/ライター/ワーママ(神戸市)

兵庫県神戸市で子育て中(0歳・2歳)のワーママ。フリーランスのウェディング司会者として活動しながら、カフェで隙間時間に執筆。趣味の茶道は、お抹茶といただく季節菓子が楽しみのひとつ。忙しい合間の息抜き時間を、有意義に楽しんでもらえるような地域情報を発信していきます。1984年明石市出身。

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