コロナ禍で加速する“無人化”計画 アフターコロナに突き進む中国の無人物流・交通革命

竹内亮

ドキュメンタリー監督 番組プロデューサー(株)ワノユメ代表

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国際通貨基金(IMF)が昨年10月に発表した予測によると、2020年中国は主要国の中でGDPが唯一プラスになるという。コロナ禍に喘ぐ欧米各国を尻目に中国では今、「アフターコロナ」に向けた計画が着々と進んでいる。コロナを押さえ込むだけでなく、急スピードで経済復興を進める中で、今注目を集めているのが、「無人都市計画」だ。人との接触を減らし、ビジネス効率を上げるAIロボットが今、飲食、病院、交通、サービス、物流など様々な業界で、急速に広がっている。コロナ禍で無人化が加速する3つの現場を取材した。

■中国初!公道を走る無人運転バス

中国江蘇省・蘇州市。“東洋のベニス”とも呼ばれる美しい水郷の街として知られるこの都市で今、通称「無人都市計画」が進んでいる。
蘇州市相城区が今年立ち上げた「上路計画」は、街を走る公共の車を自動化しようという試みで、「自動運転バス」、「自動運転タクシー」、「無人清掃車」、「無人配送車」が運営を開始している。

我々はこのうちの昨年10月導入されたばかりの「自動運転バス」に密着した。
これは、中国で初めて公道を走る無人運転の通常運行バスだ。9人乗りの小ぶりのバスで、時速20~50kmで走行することができる。

このバスの車両には5つのレーダーが搭載されており、360度死角なしで200m以内の障害物を感知することができる。中国最大手の通信会社チャイナモバイルの第5世代移動通信システム(5G)を通して、前方にある信号が変わるまでの時間や、周囲の車両情報などを逐一受信しており、これらの情報を処理することによって、安全な運転を実現している。

「自動運転」と言うものの、運転席に人が座っている。聞いてみると、彼は「運転手」ではなく「安全員」なのだという。現在の法律では必ず運転席に人がいないといけない。そこで、システムが正常に起動しているかを確認するため、運転席には「安全員」が座っている。また、万が一故障などのトラブルが発生した場合は安全員が手動で運転するという。

■「1000個の棚が動く」無人倉庫

次に訪れたのは、世界的に有名な中国のIT企業・アリババグループが運営するネットショッピング専用の倉庫。中に入ると、そこに広がっていたのはSF映画のような世界だった。せわしなく動き回る貨物棚、まるで動き続ける迷路のようだ。従来型の倉庫は、注文を受けたスタッフが貨物棚を歩き回り、商品を探していた。しかしこの倉庫では、注文に合わせて貨物棚が動き、スタッフに届けてくれる。

このシステムを支えるのがAGVと呼ばれる無人搬送車だ。この倉庫では常に1000台のAGVロボットが稼働している。このロボットは、25kg以上のものを載せて運ぶことができるうえ、たったの3時間の充電で8時間休まず働き続けることができる。人の労働力と比べるとその差は歴然だ。
10億元(約160億円)近い投資によって建設され、2018年4月から稼働を開始したこの倉庫は、1600万個の荷物を保管することができ、その種類は4万種類に上る。中国の買い物の祭典と知られ、セールが行われる11月11日、通称「ダブルイレブン(いい買い物の日)」では、1日で85万個もの商品の出荷に対応したという。主な搬送地域は蘇州、常州などの近隣都市で、これらの都市には注文当日に商品を届けられるというから驚きだ。

新型コロナウイルスの流行を受けて、人々の生活スタイルが大きく変わった2020年。もともとネットショッピングが盛んであった中国であったが、以前にも増してネットショッピングが利用されるようになり、この倉庫では新型コロナ流行期間、注文量が以前の倍になったという。このような変化にも“無人化”が功を奏した。この倉庫の現在の作業効率は人が作業する倉庫よりも300%アップしているそうだ。

■天気も疲れも関係ない「デリバリーロボット隊」

アリババ本社のお膝元、浙江省杭州市にある名門大学・浙江大学。最近、ここで新しい無人化サービスの実験が行われている。「最後の3キロの配送」を専門とする、デリバリーロボット隊だ。
客がネットで買った商品が先述の倉庫からトラックに乗せられ、大学構内にある宅配物センターに届くと、そこからがロボットの出番だ。このデリバリーロボットの形状を簡単に言い表すと「動くロッカー」だ。商品を載せてキャンパス内を自由自在に走り回り、障害物も避けながら、届け先の住人が暮らす宿舎の前まで自動運転でやって来る。
デリバリーロボットの利点は、客が荷物を遠く離れた配送センターまで取りに行かなくてよいこと。このキャンパスは、学生と大学職員を含め約7万人が生活をする1つの巨大な街であり、従来学生は、宿舎から宅配物センターまで約1〜2キロの距離を歩いて往復していた。

大学生に話を聞くと、数万人が生活する場所の配送センターともなると莫大な量の宅配物が並べられ、そこから自分のものを見つけるのには時間がかかる。また、取り違えが起きたり、盗まれたりすることも日常茶飯事であったという。

しかし、配送ロボットが取り入れられたことにより、それらの煩わしさから解放されたのだ。学生たちはスマホのアプリ上で配達時間を予約することができる。そして、配送ロボットが予約時間に寮の玄関先までに届けてくれるのだ。その上、配達地点に到着するとロボットが電話をして知らせてくれる。

この配送ロボットは天気や路面状況によって配送スピードを計算し、変更する。右折、左折、バックも問題なく、障害物を感知して避けること、止まることもできる。

アリババは2017年時点で、既にこの大学構内で試験運転を進めていたが、安全性を考慮した上で正式運用とはならなかった。しかし昨年11月、技術の発達と新型コロナ流行期間に中国人に根付いた“無接触”の意識が結びつき、実用化へと至ったという。

なぜ今、中国でこんなにも急速に無人化が進むのか。アリババグループで無人化技術を開発研究する郭振宇さんに話を聞いた。「中国はもうすぐ1日の宅配物が10億個に上る時代がやって来る」という。そのような時代を目前にし、解決しなければならないのは「末端の物流」だと話す。

■「アフターコロナ」の時代

中国に住む私から日本のコロナ関連ニュースを見ると、毎回、日中間の温度差に驚く。日本で毎日数千人の新規感染者が出ても、それほど大袈裟な事態になっていない。中国では1人無症状感染者が出ただけでその地区は大騒ぎとなり、もし10人感染者が出ようものなら、その地区の学校は全て休校、何十万の住民全員に無料でPCR検査を受けさせるなど、徹底した感染防止対策が実施されるからだ。

今回、私がマスク無しで自由に取材に動き回っている姿を見て頂ければ分かるが、中国は目下、コロナ対策と経済復興を両立させている。そしてさらに、このコロナ禍をきっかけとして、より多くの業界で非接触型の無人化が進むと考えられている。

記事執筆
竹内亮

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