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【英会話】思われてなかった って言ったら、外国人が悩んじゃった。なんで?

英語雑学エッセイスト 徳田孝一郎英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

 え~、わたくし徳田孝一郎と申します。

 元英会話スクールVice-presidentで、現在は英語をネタにしたエッセイや小説を書いたり、企業向けの英語・英会話研修スクールを経営したりしてるんですが、英語を話せるようになったのは30代中盤でして。

 それまでの私の失敗英語や、今も私の周りで起こっている英語にまつわる失敗談を多少脚色もまじえて、笑いながら英語を憶えていただこうというエッセイです。

of が、あると、ないで

 Native English Speakerはけっこう哲学好きが多くて、私が大学で現代思想(哲学)を勉強したと知るとかなりの確率でその手の話題をふられます。

 なんでだろうな? と思うんですが、われわれNative Japanese Speakerと話しても盛り上がらなくて、我慢していたところにいいカモが来たということかもしれません。ネギまでしょってるつもりはないんですが。よく煮られちゃう。

 このあいだのことですが、ある女性のNative English Speakerと雑談していて、プラトニックラブの話を振られました。

徳さん、知ってる? プラトニックラブはいまでは精神的な愛を意味しているけど、古代ギリシアでは、同性愛を意味していたんだって。
Have you heard, Toku? Platonic love means non-romantic love now but in ancient Greece it meant homosexual love.

 まぁ、これは現代思想(哲学)を修めた人間のあいだでは有名な話でして、
「ああ、そうだよ。愛は人間同士のものだからね」
と答えたんです。で、続けて、

だって、女性と子どもは人ではないと思われていたから。
Because women and children weren’t thought human beings.

って言ったんですが、そのNative English Speakerがちょっと考えこんじゃった。

 ああ、女性には不愉快なこと言っちゃったかな と思って、「もちろん、20世紀になってそういう考え方はミシェル・フーコーとかに否定されて行くんだけど」と慌ててフォローしたんですが、それでも、考えこんでる。

 どうしたの? って恐るおそる聞くと、そのNative English Speakerがこう言ってきた。

徳さん、やっぱり、ofとasが必要よ。

ですって。不愉快に思っていたわけじゃないとほっとしたんですが、今度はこっちが考えるこむ番。

 ご存じの方も多いと思いますが、thinkには大きく分けて2つの意味があります。

~と思う という意味と、考える という意味です。
~と思う は、後ろに直接、名詞を置くことができます。I think him a good guy. (私は彼をよい人だと思う)のような形です。
一方で、
考える は、後ろに前置詞のof やaboutが必要です。I think of him as a villain. (私は彼を悪者だと考える)のような形にします。

 私は古代ギリシャの人々が女性や子どもを人間でないと思っていた(今の常識でいうと酷い話ですが)と思ったので、ofもasも使わなかったのですが、そのNative English Speakerの女性いわく、

古代ギリシャの人たちだって、ぱっと見には人間と思っていたんだろうけど、よく考えて人間と考えないようにしたのではないか? 

とのこと。ああ、なるほどって思っちゃいました。
 確かに、古代ギリシャの人たちも意図的に人間と考えなかったというほうが自然。ぱっと見、女性も子供も人間なんですから(当たり前のことですが)。
 どうも私は古代ギリシャの人たちをあまりに特殊な人々と思い込んでいたようです。反省。

 でも、面白いですね。思っていることを英語にすることで、自分の考えていることがちょっと不自然であることがわかったり、なんとなく考えていたことの矛盾がわかったりする。自分の考えを精査できるんです。
 ふたつの言語を使える利点だと思います。

 どうぞみなさんも、英語を使ってご自身の考えを鍛えてみてください。意外な発見や気付かなかった思い込みを見つけるからもしれませんよ。

 と、こんな感じで、Native English Speakerたちとの英語やカルチャーギャップのお話をご披露したいと思っております。
 お気に召しましたら是非ともごひいき(フォロー)くださいますようお願い申し上げます。

 ~と思う と、考える の使い分けを解説したので、ちょっとクイズ的なものを。
 子どものころの夢の話などは、たまにするものですが、そういう際に、「歌手になろうと思ったことある?」なんてことも訊くことがあると思います。その時は、
Have you ever thought a singer?
Have you ever thought of being a singer?
どっちでしょう? 答えはイラストの下です。

Have you ever thought of being a singer?
ですね。将来のことは「思う」のではなく「考える」ものですから。
 もちろん、私はそんなことを考えたことはありません。

イラスト 大橋啓子

英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

英語嫌いだったが、仕事で必要に迫られ日本語を英語にする方法で英文法をマスター。その実績を買われて英会話習得カリキュラムを作成するために英会話スクールに転職し活躍する。この時期に英文法をネタにした小説「英語の国の兵衛門」も上梓。その後Vice-presidentに就任。Native English Speakerのマネージメントを経験し、日本人とは違った価値観や思考法に振り回されるという経験を多々する。現在は独立し、英会話スキルだけではなく、Native English Speakerとうまく交渉できるスキル習得を目指した英語・英会話研修スクール「英語・直観力」を経営している。

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