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【英会話】外国人がワガママに見える意外なわけとは?

英語雑学エッセイスト 徳田孝一郎英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

 20年ほどNative English Speakerたちのマネージメントをやっています。いまでこそ、それほどトラブルなく彼らと付き合っていますが、初めのころは苦労しました。
 言葉はもちろんですし、考え方も違う。そんな彼らとの試行錯誤をちょっと脚色も加えつつ、ご披露します。読むとNative English Speakerとうまくやっていくコツや自然な英語を得られるお得なエッセイです。

迷惑はかけるもの

 会社のホームページに載せる写真撮影ために講師たちと撮影スタジオに行ったときのことです。ある女性講師が口紅を忘れたって言ってきたんです。まぁ、ネットに載せるんだから、よりきれいに写りたいというのはわかる。聞いてみると伊勢丹なら売ってるはずというので、カメラマンさんに頼んで車を出してもらったんですが、行ってみると売ってない。
「どうする?」
 って、講師に聞くと、申し訳なさそうですがはっきりと
「高島屋にならあるとおもいます。お願いします」
 言ってくる。
 カメラマンさんも私も乗り掛かった舟ですから、じゃあということで、高島屋に行くと今度はちゃんとお目当てのものがある。カメラマンさんと私はほっとして講師を見たんですが、なぜか思案顔。どうしたの? ときくと、
「ああ、この服の色にいつもの口紅じゃ、合わないわ」
 と一言。
「ごめんなさい。合う色の口紅が伊勢丹に売ってたんで、もう一度行ってもらえますか?」
 と追撃されました。
 さすがにカメラマンさんはちょっとムッとしちゃって、私が平謝りに謝ってまた伊勢丹に戻ったんですが、講師は平気な顔で、伊勢丹で服に合った口紅を買えてご機嫌でした。撮影もなんとかできたんでよかったんですが、この講師の遠慮なしに自分の意志を通すところは衝撃で、どうしてなのかな? と疑問に思う。
 それを友人のRichにたずねたんですが、みなさん、どうしてかわかりますか? この講師がとくにメンタルが強いってことじゃないんです。実はベースになっているある考え方があるんです。

 Richいわく、
人に迷惑をかけるのは当たり前だからね、Native English Speakerのあいだでは」
とのこと。それは知っていたんですが、あまり納得がいかなんで、
「いや、2店目まではいいけどさ」
 と反論すると、
「3店目だといけないの?」
 と言われて、はっと気づく。
 Native English Speakerたちと反対に人に迷惑をかけないようにしなさい と育てられた日本人のわたしは無意識のうちに、他の人から掛けられる迷惑の限度を設定していたんです。自分なら2店目で納得してそこまでにするだろうな という設定です。それを女性講師がこえて来たんで、衝撃を受けた。
 Native English Speakerが「迷惑をかけるのは、当たり前。自分もかけられるのでお互い様」という考え方を持っているのは知っていましたが、それに接したときに、自分の中の「人に迷惑をかけないようにしなさい」という考え方で反応しては、びっくりしたり、腹を立てたりすることになると知った出来事でした。

迷惑にどう対処する?

「でも、えんえんと迷惑を掛けられる状態になったらどうするの? 無限に受け入れるの、Richは?」
 数の問題でないなら、どうするのかと当然の疑問も浮かんだんで、きいてみました。すると、Richはあっさり。
「次の予定があったりすれば、『時間がないからこれ以上は付き合えないよ』って、はっきり言うさ。相手は残念がるだろうけど、それはそれで仕方がないって思うはずだよ」
 ですって。
 なるほど、お互いに迷惑をかけるのが当たり前ということは、迷惑を受け入れないという迷惑返しをしても、感情的なしこりは生まれないんですね。
 職場などで、Native English Speakerの迷惑を顧みない行動に困らされている方、思い切って迷惑を拒否する迷惑返しをしてみてください。意外にNative English Speakerは受け入れてくれますよ。あ、その際はきちんと理由をつけて。Native English Speakerたちは、ダメなものはダメは通じない人々ですから。

 と、こんな感じで、Native English Speakerたちとの英語やカルチャーギャップのお話をご披露したいと思っております。
 お気に召しましたら是非ともごひいき(フォロー)くださいますようお願い申し上げます。

 最後に、迷惑返しをするときの英語の例文を考えてみましょう。
時間がないからこれ以上は付き合えないよ。
は、どんな英語になるでしょうか? 例文はイラストの下です。

I'm sorry I won't be able to join you due to another engagement.
というのはいかがでしょう。直訳ではなく、
残念だけど と、他の用事のせいで と気持ちと具体性を高めてみました。参考にしてください。
イラスト 大橋啓子

英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

英語嫌いだったが、仕事で必要に迫られ日本語を英語にする方法で英文法をマスター。その実績を買われて英会話習得カリキュラムを作成するために英会話スクールに転職し活躍する。この時期に英文法をネタにした小説「英語の国の兵衛門」も上梓。その後Vice-presidentに就任。Native English Speakerのマネージメントを経験し、日本人とは違った価値観や思考法に振り回されるという経験を多々する。現在は独立し、英会話スキルだけではなく、Native English Speakerとうまく交渉できるスキル習得を目指した英語・英会話研修スクール「英語・直観力」を経営している。

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