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長野立てこもり銃撃事件 心理学者が分析する青木容疑者のプロフィールから見える「殺害動機」の真相

赤田太郎の仕事に役立つ心理学常葉大学(静岡県)准教授 博士(教育学)公認心理師臨床心理士

みなさんこんにちは。仕事に役立つ心理学の赤田太郎です。

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今回は、長野立てこもり銃撃事件について、銃撃に関与した青木容疑者のプロフィールや生い立ちを家族心理学の視点から殺害動機について考えていきたいと思います。なお、犯人はその動機を警察には話しているようですが、あえて公表していないようです。

容疑者のプロフィール

青木容疑者は、市議会議長を親に持つ現在31歳の息子でした。いわゆる社会的地位のある家庭に育つ子どもという状況です。その中学校の卒業文集では、この世の中で最も大切なものは命だといい、2番目は何かと問われたら私は間違いなく金と書かれてありました。中学生の書く文章なので、こういうこともあるだろうとの印象です。

幼少期を知る人は、とてもいい子どもで、野球をやってたし、獅子舞もやっている元気な子どもで、なんでも、はい頑張ります という幼少期から活発でひたむきな性格だったようです。高校は県内の進学校に入学。 高校では親切で気配りがあってとてもいい人で、その後県外(東京)の大学に進学します。その後、最終的に中退して故郷に戻ったとのことです。

故郷に戻った後、青木さんはシャインマスカットの栽培を中心に農業に取り組み始めました。しかし、この間、彼はより内向的になり、他人と話したり挨拶したりすることはほとんどなくなったようです。近隣住民は、最近会話がなくなったことや消防団からの脱退したと話しています。

一方で、青木容疑者は沈黙にもかかわらず、家族と良好な関係を保っていたようです。市議会議長を務めた父親は、息子の農業への関わりに感謝していたようですが、近所の人たちは青木さんがほとんど交流したり話したりしなくなったと明かし、青木さんの中で何かが変わったのではないかと考えていたとのことです。

事件があってすぐに正光さん(父親)と話したという人は、何かあったのか声かけられて「まさかうちの子じゃねえだろうな」という話をしていたようで、その後、頭を抱えてしゃがみこんだそうです。

中野市は、正道さんの議員辞職を発表しました。正道さんは事務局に対してこんなことになってしまい、謝罪したということです。

青木容疑者の動機は、警察発表によると亡くなった村上さんと竹内さんから悪口を言われたから殺したということ、そして警官には自分が撃たなければ殺されると思ったのと供述をしています。

殺害された近所のふたりのと接点としては、村上さんが、青木容疑者の母親がやっているお花の教室に通っていたといいます。また、村上さんは竹内さんと一緒によく現場周辺の道を散歩していたと言っています。警察は青木容疑者が亡くなった4人全員の殺害に関わったとみて捜査し、動機の考えなどが進められる方針です。

なぜ近所の人なのか?

一番の疑問だと思います。

容疑者は事件を起こした後立てこもりましたが、その時に自分の母親と祖母については解放しています。また父親の説得によって警察に投降することになりました。

社会的な地位のある家庭で育った子どもは、どうしても地域の目から常に注目される存在になります。それは父親にとっても同じで、しっかりと子育てをしなければいけないという義務感に常にさらされることになります。

親にとっては、ちゃんとした子育てをしなければならない、失敗できないというプレッシャーがかかります。そして、子ども側もいい子に育たなければならないという苦しみを抱えることになります。だからこそ、幼少期はいい子だったわけです。

大学に進学するまでいい子で居続けたということ、そして実家に帰ってから愛想が悪くなったということを考えると、青木容疑者は、幼少期にかなり無理をして良い子を演じていたということが伺われます。

ここで浮き彫りになるのが、地域の目という存在です。父親も青木容疑者も地域の目から常に良いイメージで見られるように努力し続けなければならない立場でした。

事件が発覚した時に、「 まさか息子じゃないだろうな?」としたその父親の発言は、父親自身もそのしんどさに気がついていたことの表れではないかと感じます。だからこそ、青木容疑者は家族との関係が表面上でも良好だったのではないかと思います。

青木容疑者のプロフィールからは、自分らしくを生きることができなかった苦しみが、不適切な形で近所の人に向いてしまったのだろうと感じるのです。

自分にとって何が幸せなのか

今回は、また動機が明らかにされていない段階での考察になりましたが、親も子どももいくら地域の人から指示されなければならないという義務感があっても、それを裏返すようなことを行うことは間違っています。

地域の目がいい意味で働く場合と逆のかたちでつらい思いをするケースを改めて感じさせられたニュースでした。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

またお会しましょう!

常葉大学(静岡県)准教授 博士(教育学)公認心理師臨床心理士

常葉大学(浜松)健康プロデュース学部心身マネジメント学科/常葉大学大学院健康科学研究科臨床心理学専攻 准教授。立命館大学/武庫川女子大学・大学院非常勤講師。働く人と家庭のメンタルヘルス・ストレス・トラウマが専門。働くみなさんにこころの健康の大切さを伝えるために、誰でもわかりやすい心理学をYouTube・Instagramで発信しています。

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