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長野立てこもり事件「孤独をばかにされ」一方的に殺意 心理学者が分析する深層心理とは?

赤田太郎の仕事に役立つ心理学常葉大学(静岡県)准教授 博士(教育学)公認心理師臨床心理士

みなさんこんにちは。仕事に役立つ心理学の赤田太郎です。

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今回の記事では、青木政憲容疑者(31)が、長野県中野市で住民女性と警察官計4人が刃物や猟銃で殺害された事件について、「孤独をばかにされて」一方的に犯行に至った深層心理について、家族心理学の視点から考えてみたいと思います。

事件の時間的な経緯

事件は、25日午後4時25分ごろに発生しました。中野市江部で初めに村上幸枝さん(66)が刺殺され、その後、近所の住人から通報を受けて駆け付けた中野署の玉井良樹警部補(46)と池内卓夫巡査部長(61)が青木容疑者が発砲した散弾銃によって銃撃されて死亡しました。また、その後竹内靖子さん(70)も刺され、死亡しているのが見つかりました。 村上さんと竹内さんは、青木容疑者の自宅近くを一緒に散歩していたところを襲われたようです。

警察の発表によると、4人とも即死で、死因は失血死でした。また、最初に刃物で襲った竹内靖子さん(70)の遺体を隠すために路上から自宅敷地内に移動させていたことのことで、供述では「自分が孤独でいることをばかにされたと思い、女性を殺した」と話しているとのことです。青木容疑者と、女性らとの面識があったことはこれまで確認されておらず、県警は、女性らが悪口を言っていると青木容疑者が思い込んで一方的に恨みを募らせ、計画的に殺害したとみて捜査を進めています。 また、母親が自首を促したときには、死刑恐れて拒んだとされています。

悪口を言っていると一方的に思い込む?

自分の孤独を馬鹿にされて殺害にまで及ぶという犯行になかなか理解し難い状況ですが、そのプライドはどこから来るのでしょうか。

青木容疑者は自宅近くで果樹園を経営していたとのことですが、付近の住民によると、地元の会合などに出席することはなく、出会ってもあいさつすることはほとんどなし。最近は引きこもり気味だったとされます。

地域性の濃い地区でこのような態度で生活をしていると、周りから見て孤独になっているのは誰にとってもあきらかなのですが、青木容疑者にとっては、自らが選んで人とコミュニケーションを取らないようにしていたわけです。好んで交流してないことを、他人が孤独と評価することは、全く納得いかないことだったと思います。

どういう出来事を体験してそのように解釈したのかはまだ不明ですが、ただえさえ交流が少ないと情報が限られており、 こういったことは思い込みにつながりやすい状況だったと言えるでしょう。また、自分の悪評を聞きたくないために、さらに回避的になっている中で一方的な恨みが積み上げられていったと考えられます。

なぜ迷彩服なのか

目撃証言などによると、青木容疑者はサバイバルナイフのようなもので竹内さんを襲った後、逃げる村上さんを追い掛け、殺害したようです。警察官2人はパトカーで現場に駆けつけましたが、銃撃され死亡します。青木容疑者は、「射殺されると思い銃撃した」などと供述しています。

青木容疑者の迷彩服は、まさに自分を守るための防御態勢そのものを表しているようです。警官には撃たれるかもしれないと思って笑いながら挑発する姿は、社会全体に対する拒絶と破壊に感じます。また、地元の名士の息子として、家族の見本のような生活を送らなければならなかった息苦しさからの開放を象徴するようです。

一見矛盾する行動は特別な人生背景から

この事件を象徴的に分析して感じたことは1つの交流が少なくなるとどうしても自分の作り出した世界観の中に閉じこもってしまうということです。人間という存在は生まれながらにして自分らしくありたいと思う存在であり、それが実現できないとさまざまな社会的な問題を生み出します。

経営する果樹園にまさのり園 と名付けられたことについて考える時、本当に自分のしたかったことは何なのかという課題を浮き彫りにしているように感じます。

記事を最後までお読みいただきありがとうございました。

赤田太郎の仕事に役立つ心理学では、家族支援を通してさまざまな家族の問題や、社会のおける心理的な解説そして仕事に役立つ心理学をお届けします 。

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常葉大学(静岡県)准教授 博士(教育学)公認心理師臨床心理士

常葉大学(浜松)健康プロデュース学部心身マネジメント学科/常葉大学大学院健康科学研究科臨床心理学専攻 准教授。立命館大学/武庫川女子大学・大学院非常勤講師。働く人と家庭のメンタルヘルス・ストレス・トラウマが専門。働くみなさんにこころの健康の大切さを伝えるために、誰でもわかりやすい心理学をYouTube・Instagramで発信しています。

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