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不登校はこころの甘え?現役スクールカウンセラーが語る親子がすれ違わないためにすべきたった一つのこと

赤田太郎の仕事に役立つ心理学常葉大学(静岡県)准教授 博士(教育学)公認心理師臨床心理士

皆さんこんにちは。仕事に役立つ心理学の赤田です。

普段は大学で教員をしながら、学校や企業でのカウンセリングを行っています。You Tubeインスタでこころの健康について情報を発信しています。よろしければフォローをよろしくお願いします。

不登校はコロナ禍をきっかけとして爆発的に増加をしており、社会問題となっています。文部科学省の2021年度「問題行動・不登校調査」の結果では、不登校の小中学生が24万人を超えたことがわかりました。その内訳としては、小学生約8万人、中学生約16万人となっています。20万人を超えたことは始めてで、昨年より2割増加しています。今回や記事では、学校にいけなくなってしまう親子が、すれ違わないために大切にしたいことについてお話したいと思います。

不登校の始まり

コロナの前から不登校は増加傾向でしたが、急増したのは、コロナ禍がおもな原因と文部科学省は推察しており、学校の臨時休業や学校生活でのさまざまな制約によって「生活リズムが乱れやすく、交友関係を築くことが難しくなり、児童生徒に登校意欲がわきにくい状況だった」としています。

不登校とは、子どもが学校に行きたがらなくなることですが、基本的に急に行きたくなくなるわけではありません。こころの問題全般に言えることですが、風邪で発熱することとは異なり、基本的に慢性的な問題を抱えています。だからこそ、その原因はなかなか気がつきにくいという側面があります。

不登校は甘えか?

不登校の原因を本人の甘えだ!と考える人がいます。はたしてそうなのでしょうか?

不登校の原因は、主に4つあるとされていて、発達課題、発達障害、生活環境、器質的要因です。これらは関係ありませんでした!なんて書かれているサイトもありますが、それは間違いです。

まず発達課題とは、すべての人が乗り越えなければならない、人生の成長に必要なことです。たとえば、幼児期だとトイレットトレーニングと呼ばれる排泄の自律が必要ですし、青年期ですと、親からの精神的自立が求められます。

発達障害とは、本人の個性に当たる部分で、元々生まれ持った特性のことを指します。ひとは、一人として同じ人はおらず、得意・不得意があります。それが極端になると、どうしてもそれらに引っ張られて生活に支障をきたします。

生活環境は、夫婦関係、友人関係、対教師関係(人間関係)及び経済的状態(衣食住)など生活環境に起因するものです。これは、発達課題や発達障害をどう支えていくかに関わっているので、この環境を整えることが、不登校改善の鍵になります。

最後は器質的要因です。これは医学的になんらかの障害があり、それが原因で学校に通えない状態であることを指しています。医学的サポートが必要なケースになります。

心理カウンセラーに相談するということは、こうした原因を特定して、その原因を改善していくことになるわけです。こうしてみてみると、不登校が甘えだと一概に言えないと理解していただけると思います。

すれ違わないために大切にすべきたった一つのこと

それでは、なぜ親と子どもがこんなにすれ違ってしまうのでしょうか?それは、人間が本来持っている特性が原因になっています。

その原因とは、なにかしらトラブルがあったときには、原因を本人に求めてしまうという傾向から来ています。これは、専門的には直線的因果律と呼ばれるもので、簡単に言うと、1つの結果に対して1つの原因で説明しようとしてしまう傾向を指しています。私たちは何かしらの出来事に対して、そういう理解をしてしまいがちなのです。

不登校の場合は、本人が不登校なので、その原因は本人にあると単純に思うわけです。例えば、いじめが原因であっても、いじめる子が悪いには違いないですが、それでもいじめられる本人にも原因があると考えてしまうのです。そうなると、どこまでいっても本人の中に原因を探すことになります。本人の甘えを原因にしてしまう理由は、その単純すぎる1つの解釈に私たちが固執してしまうことが原因なのです。

そこから脱却するために、スクールカウンセラーは、円環的因果律と呼ばれる方法で不登校を理解しようとします。円環的因果律とは、お互いに影響し合う関係で不登校という現象が起きているのだと理解します。より専門的に言うと、原因が結果にもなるし、結果が原因にもなるという循環関係を把握していこうとします。

こころの甘えと思わないために

まず、学校に行けない状態は、慢性的な問題や課題を抱えているからだ、と認識することから始めることが大切です。不登校という現象は、さまざまな状況が重なり合った複雑な現象です。単純に原因と結果があると思い込まないことが大切です。そうすることで、おもむろに本人に原因の説明を強いることが少なくなると思います。

本人が本当のことを話すことにも信頼関係が必要です。何を話しても傷つけられないという信頼関係がないと、なかなか言い出せないものです。ましてや原因は本人と考えて尋ねてしまうと、どうしてもこちらが威圧的になりかねません。

なるべくは深刻にならないうちに対処できると、解決も早くなります。気になることがあったら、学校の先生や関係者、スクールカウンセラーに相談するようにしてください。きっといろいろな方向から、解決の糸口を探してくれるはずです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

赤田太郎の仕事に役立つ心理学では、仕事、家庭で役に立つ心理学を発信しています。よろしければ、フォローとチャンネル登録をお願いします。

それではまた次の記事でお会いしましょう。

常葉大学(静岡県)准教授 博士(教育学)公認心理師臨床心理士

常葉大学(浜松)健康プロデュース学部心身マネジメント学科/常葉大学大学院健康科学研究科臨床心理学専攻 准教授。立命館大学/武庫川女子大学・大学院非常勤講師。働く人と家庭のメンタルヘルス・ストレス・トラウマが専門。働くみなさんにこころの健康の大切さを伝えるために、誰でもわかりやすい心理学をYouTube・Instagramで発信しています。

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