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都築響一キュレーション 驚異の脱力「おかん」アート【東京都渋谷区】

Luna Subitowriter editor(東京都渋谷区)

またすごい展覧会に出くわしてしまった。マスクをしながら笑いをこらえるのにもう必死。脱力しまくって、ほっこりハートがあったかくなるラブリーなアート。そんなゆるアートがこれでもかとてんこ盛りなのが、東京都渋谷公園通りギャラリーで4月10日まで開催中の展覧会「Museum of Mom's Art ニッポン国おかんアート村」

おかんアートとは、世の母親たちが趣味でつくりためている独特な手芸作品のこと。その多くは作家が不明でよみびとしらずなのだけど、2000年代初頭から「おかんアート」と呼ばれて密かに注目されてきたよう。

今回の展覧会のキュレーションは作家・編集者・写真家である都築響一さんと下町レトロに首っ丈の会。1000点以上に及ぶ驚異のおかんアートの数々に、私はもうのっけから悶絶…! とり澄ましたファインアートの対極にあるおかんアートの圧倒的な破壊力に お腹の底からぷるぷる震えました。とにかくまあちょっと見てくださいな、最高にファンキーでチャーミングなおかんアート宇宙を!

普段は地域のバザーなどで売られていたり、個人宅の玄関やトイレ、個人経営の喫茶店やスナックの飾り棚などにひっそりと(あるいはちゃっかりと)置かれているおかんアートが、渋谷公園通りに大集結!もはや渋谷ハロウィンの比ではないカオス感かも。

予備のトイレットペーパーを入れる手作りあみあみロールちゃんたちも、パリピのように着飾ってハレ舞台でウキウキモード♪ きっと トイレ以外の場所に飾られる日が来るなんて思もよらかなかっただろうなあ。

おっと、どこかで見たようなキャラに似てなくもないおかんアートもちょいちょい見受けられますが…まあそこは他人の空似ってことかな 笑。そんな自由すぎる真空地帯にあるのが、おかんアートなのかと。

都築さんが撮影したおかんアーティストたちの写真もほっこりほかほか素敵です。

愛すべき おかんアーティストたちと、夥しい数のおかんアート作品群。なかには、おとんアーティストも混じっていますね。

おかんアートの哲学が光るキャッチコピーの数々もナイスです!このギャラリーはいつも展示のしかたにすごく愛を感じます。

これなんて、草間彌生の作品さながらの謎の密度。なんなら、草間彌生作品のそばにそっとインスタレーションしてみたいかも。。


それにしてもなんでこんなシュールなデザインに? これはいったい何の役に立つの?・・・などという疑問は、おかんアートの前では撃沈する。

おかんアート的キューピ―ファッションショー。転がっているのはキューピーちゃんの納豆巻き?何もかもが斬新です
おかんアート的キューピ―ファッションショー。転がっているのはキューピーちゃんの納豆巻き?何もかもが斬新です

身近にあるものを捨てずに利用して、「もしかしたらこれをこうしたらたのしいやん」というひょんなひらめきから編み出される天然のおかんアート。コンセプチュアルアートの極北にあり、用の美を追求した民芸とも違う、おそろしくキッチュでラブリーなおかんアート。断捨離もミニマリストもアートバブルも何もかも吹き飛ばす破壊力に快哉!!

これらに意味を尋ねるのは野暮というもの。このゆるさをただ愛でるのがおかんアートの流儀
これらに意味を尋ねるのは野暮というもの。このゆるさをただ愛でるのがおかんアートの流儀

展示スペースの仕切りのちょい空きスペースにも、さりげなくおかんアートをあしらうセンスがまさにおかんアート。

おかんアートの教科書ともいうべき、ホビー雑誌もずらり。

ホビーキットにもおかんアートのエッセンスが。ここからさらに独自の創意工夫を凝らすのがおかんアートの極意。

特別展示「おかん宇宙のはぐれ星」(都築響一キュレーション)には、おかんアートの枠を超えた3人の“名人”たちの名作がずらり。

高田馬場の名画座「早稲田松竹」で長年清掃のお仕事をしながら、劇場の入口やトイレを飾る手作りオブジェのジオラマを作ってきた荻野ユキ子さん(1934年生まれ)の愛らしい作品や、
広告チラシを使った作品を作っている野村知広さん(1972年生まれ)の膨大なチラシ箱など、おかん宇宙から独自の宇宙を構築している作品もおもしろかったです。

嶋暎子さんのコラージュ作品。全ての建物が切り抜かれています!
嶋暎子さんのコラージュ作品。全ての建物が切り抜かれています!

中でも驚いたのが、高校時代に独学で切り絵を始めたという嶋暎子さん(1943年生まれ)のコラージュ作品。広告チラシなどの建物や家具の写真を切り抜いて再構成した巨大なコラージュは、デジタルが当たり前の時代に、1枚1枚ハサミでチョキチョキ切り抜いたチラシがこれでもかと貼り重ねられており、もはやブリューゲルのバベルの塔を彷彿させる崇高さ…。

嶋暎子さんの新聞バッグも、ここまで大量にならべると圧巻。表に見せている記事の選び方もおもしろい
嶋暎子さんの新聞バッグも、ここまで大量にならべると圧巻。表に見せている記事の選び方もおもしろい

はい、いろいろありましたが、おかんアートの世界、いかがだったでしょう? ここでご紹介したのはほんの一部です。アート好きな方にぜひぜひ観ていただきたい 目からうろこのアート展です。きっと、眺めているだけでたくさんのおかんたちの愛に包まれて、ほっこり幸せな気持ちになれますよ。

公園通りの交差点でも目を引く極彩色のおかんアートの電飾が目印です。

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Museum of Mom's Art ニッポン国おかんアート村
会期:2022年1月22日(土)~ 4月10日(日)11時~19時
閉館日:月曜日(ただし3月21日は開館)、3月22日(火)
入場料::無料
会場:東京都渋谷区神南1-19-8 渋谷区立勤労福祉会館 1F
東京都渋谷公園通りギャラリー 展示室 1、2及び交流スペース 
電話 : 03-5422-3151

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writer editor(東京都渋谷区)

奥渋在住20余年。旅、アート、インテリア、ウエルネス、映画、猫など多様なメディアに携わる文筆家。

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