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【4月1日廃止】役名「明日萌駅」の方が目立つ!? 留萌本線 恵比島駅

清水要鉄道ライター

俳優の中にはしばしば演じた役の方が本人の名前よりも目立つ人がいるが、駅にも「役名の方が目立つ駅」が存在する。4月1日で廃止となる留萌本線 恵比島駅もそんな駅の一つだ。

明日萌駅
明日萌駅

恵比島駅は平成11(1999)年のNHK連続テレビ小説『すずらん』に物語の舞台「明日萌(あしもい)」駅として登場した。撮影にあたっては駅および周辺に大正時代の駅や街並みを再現したロケセットが建てられ、現在も観光資源として残されている。しかし、右書きで「明日萌駅」と掲げられた建物はあくまでも「ロケセット」で、JRではなく沼田町が管理している。

恵比島駅 駅舎
恵比島駅 駅舎

恵比島駅の本物の駅舎はその隣に建つこちらの建物。ロケセットと違い、駅名は掲げられていないので、事前知識なしにこの駅を見たら、「明日萌」が本当の駅名だと勘違いしてしまうだろう。

恵比島駅 駅舎
恵比島駅 駅舎

本物の駅舎の方は外壁こそ木材が張られているが、木造駅舎ではなく貨車を改造した駅舎である。昭和61(1986)年11月1日の無人化後に、それまでの木造駅舎にかわって設置された。『すずらん』のロケにあたっては、物語の時代設定(大正~昭和)にそぐわないということで、外側に木の板を張り付けて木造の小屋のように見せかけられている。かつては幌糠駅大和田駅と同じ外観だった。

恵比島駅を発車する留萌行き列車
恵比島駅を発車する留萌行き列車

最後に恵比島駅の歴史を振り返っておこう。恵比島駅は明治43(1910)年11月23日開業。かつては留萌炭鉱からの石炭を運び出す留萠鉄道という私鉄が分岐していたが、昭和46(1971)年4月15日に廃止されている。駅裏には留萠鉄道の本社が廃墟となって残っているが、夏は植物に、冬は雪に阻まれて近付くのは難しそうだ。恵比島駅はまもなく112年余りの長い歴史に幕を下ろすが、廃止後の駅がどうなるのかは公表されていない。明日萌駅ロケセットはおそらく廃止後も引き続き残されるだろうが、JRの持ち物である貨車駅舎やホームがどうなるのかが気がかりである。筆者としてはロケセットと一体となって末永く残ってほしいものだと思う。

石狩沼田駅真布駅ー恵比島駅ー峠下駅幌糠駅藤山駅大和田駅留萌駅

鉄道ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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