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【ゴジラがディズニーパークスを襲撃?!】ゴジラが戦ったアメリカの世界的スーパースターとは?

二重作昌満博士(文学)/PhD(literature)

皆様、こんにちは!

文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)です。

いよいよ新年度が始まりました。

新しい生活、新しい環境に心躍らせる方々もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか?

さて、今回のお話のテーマは「怪獣」です。

突然ですが、皆様は「怪獣」と聞くと、何を思い浮かべますか?

例えば・・・恐竜のような姿のゴジラでしょうか?

ゴジラシリーズより、怪獣ゴジラ(バーニングゴジラ、筆者撮影)
ゴジラシリーズより、怪獣ゴジラ(バーニングゴジラ、筆者撮影)

それとも大きなワニガメのようなガメラ?

ガメラシリーズより大怪獣ガメラ(筆者撮影)
ガメラシリーズより大怪獣ガメラ(筆者撮影)

はたまた、「フォフォフォ」と特徴的な声のバルタン星人でしょうか?

ウルトラマンシリーズより宇宙忍者バルタン星人(筆者撮影)
ウルトラマンシリーズより宇宙忍者バルタン星人(筆者撮影)

怪獣に詳しくなくても、街を壊し、口から火(熱線)を吹き、大暴れする怪獣の姿を思い浮かべる方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

それだけ「怪獣」というものが、日本に生きる私達の心の中に強く息づいているのかなとも感じますが・・。

それもそのはず、日本は世界一の怪獣大国。

毎週テレビで新しい怪獣が登場する番組が放送されている上、

各社が製作した怪獣の映画やテレビ番組も、半世紀を超える長い歴史を持つ。

そんな希有な国こそ、私達が暮らす日本なのです。

ウルトラマンシリーズよりウルトラ怪獣達(筆者撮影)
ウルトラマンシリーズよりウルトラ怪獣達(筆者撮影)

そんな日本の怪獣達ですが、彼らの活躍は海を超え、今日も世界中に拡がっています。

例えば、ゴジラやガメラはアメリカに渡り、現地で人気を博してきたほか、時にはその国を象徴するスーパースター達と戦うことさえありました。

そこで今回は、日本が世界に誇る怪獣であるゴジラに焦点を当て、ゴジラとアメリカのスーパースター達との関わりについてご紹介したいと思います。

※「私、怪獣の映画やテレビを観たことがないわ」という皆様のために、本記事は概要的にお話をしております。お好きな物を片手に、ゆっくりと記事をご覧頂けますと幸いです。

【あの有名なフランケンシュタインと対決?】ゴジラのアメリカでの名前はジャイガンティスだった?!

記事の本題に入る前に、少しだけゴジラについてお話をしたいと思います。ゴジラは、1954年公開の東宝製作の怪獣映画『ゴジラ』にて銀幕に初登場しました。本作は、ビキニ環礁の水爆実験によって眠っていた生物が怪獣となり、東京を破壊する内容であると共に、核実験に対する警鐘や平和への祈り等、戦後の日本を想起するメッセージ性が強かったのも特徴でした。

ゴジラシリーズより、怪獣ゴジラ(筆者撮影)
ゴジラシリーズより、怪獣ゴジラ(筆者撮影)

映画「ゴジラ(1954)」は観客動員数960万人の大ヒット。日本で好評を博した本作は、1956年に『ゴジラ・キング オブ モンスターズ(Godzilla:King of Monsters)』と改題してアメリカのブロードウェイで公開されました。本作は日本の『ゴジラ(1954)』の内容を一部編集したもので、4日間で1万7千ドル(当時の日本円で約600万円ほど)の大ヒットを記録しました。

『ゴジラ・キング オブ モンスターズ』米国販売用ビデオ&DVD
『ゴジラ・キング オブ モンスターズ』米国販売用ビデオ&DVD

アメリカでの好評を受け、1955年に日本で公開された次回作『ゴジラの逆襲』も1959年に米国へと輸出されました。アメリカでの公開タイトルは『ジャイガンティス ザ ファイヤーモンスター(GIGANTIS, THE FIRE MONSTER)』。

「なんだそりゃ。ゴジラがタイトルに入ってないじゃないか!」

・・・ごもっともな指摘だと思います。実はこの映画、本作に登場するゴジラの名称をなぜかジャイガンティスという別の名前に変えてしまった上、「ゴジラに似ているが別の怪獣」というややこしい設定にしてしまいました。主役の名前を変えただけで、映像そのものは『ゴジラの逆襲』の流用のため、私達日本人にはどう見てもゴジラにしか見えなかったのです。

その後、これら特撮怪獣映画で海外市場を開拓した東宝は、1960年代に入るとアメリカで検討されていた「キングコング」の企画に関心を寄せるようになります。その内容とは、キングコングと怪物・フランケンシュタインが戦うものでした。

最終的に東宝はキングコングの映画化権を獲得しますが、「フランケンシュタインではなく、ゴジラを戦わせたらどうか」という結論に至ります。先述した海外公開によってゴジラが世界的認知を獲得しつつあることに伴い、アメリカの怪獣の王様であるキングコングと、日本の怪獣の王様であるゴジラを戦わせるというものでした。

その結果完成したのが、1962年公開の東宝創立30周年記念作品『キングコング対ゴジラ』。

観客動員数は1255万人とシリーズ最大のヒットを記録しました(『シン・ゴジラ(2016)』の観客動員数は569万人なので、驚くべき数字です)。

「ところで、結局フランケンシュタインはどうなったの?」と聞かれると・・・。

『キングコング対ゴジラ』の公開後、アメリカは東宝にフランケンシュタインが登場する映画の製作を東宝に打診していたそうです。タイトルは『フランケンシュタイン対ゴジラ』(1964年7月企画)。その内容は、ゴジラが富士山でフランケンシュタインと格闘し、富士山の噴火でフランケンシュタインは溶岩に呑まれ、ゴジラも山の斜面から転落して川に流されるというものでした。

「大海原でゴジラが行方不明になるならともかく、巨大なゴジラが川に流されるのか?」

少し無理のある散り方ですが、結局この企画は実現に至らず、最終的に1965年公開の『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』に纏められ、初の日米合作怪獣映画として功を奏します。本作で描写された、大きな人型の怪物が巨大怪獣に挑む(人間VS怪獣)ですが、この描写は、翌年放送された円谷プロ製作の特撮ヒーロー番組『ウルトラマン』に大きな影響を与えることになります。

フランケンシュタイン(写真左)とバラゴン(写真右)(筆者撮影)
フランケンシュタイン(写真左)とバラゴン(写真右)(筆者撮影)

ゴジラはキングコングの代役だった?褐色美女にお熱なゴジラの姿が観られる作品とは?

「アメリカでもゴジラを製作したように、日本でもキングコングをつくろうとしていたんだね」と思っていただければ、筆者冥利に尽きますが、実は日本でキングコングを製作しようとしたお話、これに留まりませんでした。

今度はアメリカの映画会社(ランキン=バス・プロダクション)が合作話を東宝に持ち込み、提出されたのが『ロビンソン・クルーソー作戦 キングコング対エビラ』(1966年7月13日付)でした。ところがアメリカの映画会社様は、この内容に不満の意を表わした結果(理由は演出陣の交替だったのだとか)、本作のキングコングの出演は見送られてしまいました。

正に「東宝映画再出演予定のキングコング氏、作品内容に不満で降板か?」という状態に陥ったわけです。                                                                            

実現したかもしれないキングコング対エビラ(筆者撮影)
実現したかもしれないキングコング対エビラ(筆者撮影)

そこで、降板したキングコングの代役に白羽の矢が立ったのがゴジラでした。最終的に『キングコング対エビラ』は『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』と改題され、1966年12月17日に公開されました。

とはいえ本作、(やや極端な言い方ですが)キングコングの登場場面をゴジラに差し替えただけで脚本の内容はほとんど変わっていないものでした。つまり、「ゴジラはそんなことしないよ!」という描写が、度々出てきてしまうことになりました。

ゴジラは陽気な性格となり、ヒロインの美女を追いかけ回しては胡坐をかいて居眠りする。さらに美女と顔を合わせると右手の人指し指で鼻をこするポーズ(当時流行していた加山雄三さんの「ぼかあ幸せだなあ」)を披露するなど、美女にお熱な性格になってしまったのです。

本作を降板したキングコングは、最終的に1967年公開の東宝映画『キングコングの逆襲』において主演を果たし、半世紀以上に渡ってゴジラ映画の世界から姿を消すこととなります。ゴジラシリーズはその後アメリカへ次々と輸出され、現地で絶大な人気を誇るようになる中、ファンが望んでいたゴジラとキングコングの再戦は、2021年に公開されたアメリカ製作の映画『ゴジラVSコング(Godzilla vs. Kong)』にて結実することになりました。

アメリカで発売されたゴジラシリーズのDVD(筆者撮影)
アメリカで発売されたゴジラシリーズのDVD(筆者撮影)

【ゴジラ、ディズニーパークスに現る?!】日本のキャラクター達が集う場所、エプコットとは?

ここまで、ゴジラとアメリカのスター怪獣であるキングコングとの関係についてお話ししてきました。ところが、ゴジラとアメリカのスター達との関わりは、キングコングだけに留まりません。実は、ゴジラシリーズはディズニーランドを筆頭とするディズニーパークスとも浅からぬ縁を持っていたのです。

例えば、1993年公開のゴジラ映画『ゴジラVSメカゴジラ』では、なんと翼竜ラドンが東京ディズニーランド上空を飛行する描写がありました。マッハ1.5のスピードで空を飛ぶ上、飛行時に衝撃波(ソニックブーム)を放つという物騒な奴がディズニーランドの上空を飛んだわけですが(大人の事情ゆえか?)ディズニーランドが破壊されることはなかったようです。

翼竜ラドン(ファイヤーラドン、筆者撮影)
翼竜ラドン(ファイヤーラドン、筆者撮影)

ところが、アメリカのディズニーパークスに目を向けてみると、実はディズニー関連施設の中でゴジラの玩具を販売している場所が存在するのです。

その場所とは、アメリカフロリダ州にあるフロリダ ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート内の1テーマパーク「エプコット(EPCOT)」。

当パーク内には、世界11カ国(メキシコ、ノルウェー、中国、ドイツ、イタリア、アメリカ、日本、モロッコ、フランス、イギリス、カナダ)の文化や食事を楽しめるワールド・ショーケースと呼ばれるエリアがあるのですが、そこの日本館では、写真のように日本生まれのキャラクター達が一堂に会する特殊なエリアなのです。

写真のようにスーパーマリオやピカチュウ、トトロやソニック達のグッズが販売されている中、ゴジラのフィギュアも販売されていました。つまり、「ゴジラやピカチュウのグッズが、ディズニーの中で買える環境」だったのです。

エプコット日本館内(2012年筆者撮影)
エプコット日本館内(2012年筆者撮影)

日本館内販売のゴジラ達のフィギュア(2014年筆者撮影)
日本館内販売のゴジラ達のフィギュア(2014年筆者撮影)

私もアメリカ本土をよく出入りしたり、ハワイでロングステイをしていた中、ディズニーワールドにも度々訪れていたのですが、やはりアメリカのディズニーパークスは日本と比べ大らかな印象がありました。

例えば、舞浜のディズニーランドやディズニーシーで会えるキャラクター達は「ミッキー達ディズニーキャラクターだけ」、パーク内BGMは「ディズニーあるいはそれに縁のある作品だけ」というイメージが強いですが、アメリカのパークでは20世紀FOX配給のホラー映画『エイリアン(1979)』の世界を体験できるアトラクション(『ザ・グレート・ムービー・ライド』。現在はクローズ)があったり、パークのエントランスで『タイタニック(1997)』のBGMが流れていたり(ディズニー・ハリウッド・スタジオ)、ハロウィンになるとバットマンの仮装をしたゲストがパーク内を歩いていたりと、ディズニー以外の他社の作品との境界線がやや曖昧なのも特徴でした。

オードリー・ヘップバーン(2012年ハリウッド・スタジオにて撮影)
オードリー・ヘップバーン(2012年ハリウッド・スタジオにて撮影)

Walt Disney World Resort
・住所:1482 E Buena Vista Dr, Lake Buena Vista, FL 32830
・電話番号:+1 407-938-9653
・公式サイト:https://disneyworld.disney.go.com/(外部リンク)

いかがでしたか?

日本が誇るゴジラとアメリカが誇るキングコング、両者はただ戦い合う中ではなく、代役を務めたり、互いの会社を行き来したりと、まるで実在するスターのような交流を行なってきたのが伝わりますと大変嬉しく思います。

また、宜しければフロリダのディズニーリゾートにも足を運んでみてください。 

舞浜のパークとはひと味違った、日本のキャラクター達による独特な世界観を堪能することができますよ。

最後までご覧頂き、誠にありがとうございました。

(参考文献)
・高貴準三・松野本和弘・中村哲・元山掌・土屋梨影子、「ゴジラ画報 第3版 東宝幻想映画半世紀の歩み」、株式会社竹書房                                                           
・尾崎明、「pen+完全保存版 ゴジラ、再び」、株式会社CCCメディアハウス
・菅野正美、「MAGAZINEHOUSE HOUSE MOOK ゴジラ徹底研究 GODZILLA」、株式会社マガジンハウス

この記事を読んで頂き、「海外での日本特撮やアニメ作品の展開に興味を持った」という皆様、私の過去の記事やTwitterにて、海外現地での様子や商品展開についてもお話をさせて頂いております。宜しければ、ご覧ください。

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博士(文学)/PhD(literature)

博士(文学)。日本の「特撮(特殊撮影)」作品を誘致資源とした観光「特撮ツーリズム」を提唱し、これまで包括的な研究を実施。国内の各学術学会や、海外を拠点とした国際会議へも精力的に参加。200を超える国内外の特撮・アニメ催事に参加してきた経験を生かし、国内学術会議や国際会議にて日本の特撮・アニメ作品を通じた観光研究を多数発表、数多くの賞を受賞する。国際会議の事務局メンバーのほか、講演、執筆、観光ツアーの企画等、多岐に渡り活動中。東海大学総合社会科学研究所・特任助教。

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